Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2005.03.14
vol. 36
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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みなさん元気にお過ごしですか? 
写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン
「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。
発売が待ち遠しいハービー・山口さんのフォトエッセイ『日曜日の陽だまり』(求龍堂)ですが、みなさんにまたまたうれしいお知らせがあります。4月10日青山ブックセンターにて刊行記念のトークショー&スライドショーの開催が決まりました!! 詳しくは次号でお知らせいたします。では、今週もお楽しみに!!
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Photo365
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私が写真を撮るワケ
瞳の奥の優しさ、輝きを表現しつづける。写真家 ハービー・山口さんインタビューVol.4
写真家になろうと決め、新天地を求めロンドンへ旅立ったハービーさん。ロンドンは見るもの全てが美しく、刺激的だったという。今回第4週目は、写真を撮ることとは少し離れたお話についてお届けする。初恋の話、そして劇団へ入団した話。様々な経験がハービー青年を成長させていく・・・。
■ Profile ■
ハービー・山口(ハービーやまぐち)
1950年東京生まれ。大学の経済学部を卒業後、1973年渡英。約10年間を過ごす。ロンドンでは、ツトム・ヤマシタミュージカル劇団「レッド・ブッダ」で役者なども経験。折しも、イギリスはパンクムーブメントの真っ只中。実体験し、70年代の生きたロンドンの姿を写真に記録する。まだ無名ボーイジョージとの共同生活など、ロンドンのミュージシャンたちとの交流も重ね、特にロックミュージシャンの撮影では、信頼と高い評価を受ける。帰国後もヨーロッパと日本を行き来しながら、アーティストから巷の人びとまでを写真に収めている。福山雅治、山崎まさよしなどミュージシャンとの親交も深く、コラボレーション写真集やCDジャケットなども数多く手掛ける。一瞬の輝きをとらえた、気取りのない優しいモノクローム作品のファンは多く、写真集や写真展を多数開催。他にもエッセイ執筆、TVの音楽番組のナビゲーター、ラジオの DJ など幅広いジャンルで活躍中。
オフィシャルサイト
日曜日の陽だまり
ファン待望の新刊、フォトエッセイ。ハービーさんが人生の中で出会った多くの人々との交流、若者たちへの温かいエールなどが綴られる。不安の中で自分の道を探している、そんな若者たちに静かな勇気を与えてくれる一冊。
2005年3月18日発売予定/求龍堂/1470円(予価)


写真展・イベント

場所 
川崎ルフロン内
神奈川県川崎市川崎区日進町1-11
(問)044-210-3800


「ハービー・山口 写真展」
3月19日(土)〜4月10日(日)
10F 特設会場にて

『日曜日の陽だまり』刊行記念 サイン会
3月21日(月・祝)
15:00〜16:00 
9F 紀伊國屋書店にて※先着100名

ハービー・山口氏による「smile smile」ポラロイド写真撮影会
3月21日(月・祝)
12:00〜 
シンデレラステップスにて※先着20名






代官山17番地
今はなき同潤会代官山アパート。自然の地形とマッチした趣ある建物、そこで暮らす人、そしてその魅力に集った人々。懐かしさと、古きよき時代の美しい光景が響いてくる写真集。
1998年/アップリンク






LONDON chasing the dream
イギリス・ロンドンでの写真集。パンク全盛期の頃のミュージシャンやアーティスト、日常生活のスナップがつづられている。
2003年/カラーフィールド






peace
若者の笑顔、素顔、一瞬の輝きが写し出されている写真集。ページをめくるごとに心が温かくなってくる、そんなPEACEな気分になれる一冊。
2003年/アップリンク


僕たちのグロリアス・デイズ
「フィンランドの旅の途中、どこかの町で知り合った女の子と恋に落ちたこともありましたよ」

そんな話から、話はハービーさんの初恋に戻った。

「はじめての恋は、20歳の時のバレーボールの子ですよ。その子に会った翌年、また同じ公園でばったり再会したんですよ。バスケットシューズには『SAYO』って名前が書いてあった。彼女は僕のことを覚えていてくれて、話をするうちにお互いに恋心が芽生えていったんです」

「彼女とのデートは2回だけ。1回目は横須賀線で北鎌倉へ行き、円覚寺を散歩して、七里が浜の海岸に座って帰ってきた。2回目は僕のバイクの後ろに乗せて、横浜まで行って帰ってきたの。そのいずれも僕はカメラを持っていかなかったんだよね。『もし心にフィルムがあるならば、この子は僕の心のフィルムに撮っておきたい』って思ったんだ」

そのなんともキザなセリフに、普通なら聞いている方も恥ずかしくなってしまうところだが、ハービーさんはそれをあまりにも普通にサラリと流してしまう。いつの間にか、その話の自然な流れの中に吸い込まれていってしまった。

「ある日、郵便受けに一通の手紙が入っていたんですよ。あのサヨちゃんからの手紙が。封筒を開けると『今にも私の胸がはりさけそう』って、一行だけ書いてあったの。『あ〜、この恋は夢じゃなかったんだ』って思いました」

しかし、甘く純粋な恋は、ハービーさんが夢を求めてイギリスへ飛び立ったことによって終わりを迎えることになる。イギリスまで届く彼女からの手紙に、ハービーさんが返事を出すことはなかった。

「当時の僕は、イギリスに来てまで日本に縛られている自分が嫌でね。『お前はいつまで日本に縛られているんだ。もっとロンドンに飛び込め。もっと世界に羽ばたけ』っていう声が聞こえたんですよ。それで僕は手紙の返事を出さなかったんです」

「僕が独りでロンドンでやれたのは、日本に帰ればサヨちゃんがいるって思っていたから。支えになっていたんだよね。カメラにも、『SAYO』って書いたテープを張っていたんですよ」

「3年後に最後の手紙がきてね。『私、来年名字が替わります』と書いてあった。でもその裏には、『今日本に帰って来てくれたらまだ間に合います』という内容の文が書かれていたの。でも、それにすら僕は返事を出さなかったんだ」

後の1988年、元BOOWYの布袋寅泰さん初のソロアルバムで、ハービーさんは作詞をすることになった。その中の『グロリアス・デイズ』という曲の歌詞は、サヨちゃんのことを書いたものだという。

―――バイクに乗っけて君を遠く遠くに連れてった
     あの時の街の風景が一番輝いている
     君は僕の夢を追う旅に一緒に行きたいと言ったけど
     僕は1人で行ってしまった
     でもいつも君のことを考えていたよ
     今はあの時に帰れなくてとても残念だ
     あれは僕たちのグロリアス・デイズだった―――
写真から離れた一年間
フィンランドの旅からロンドンへ戻ってからはバイトを始め、ビザも数ヶ月ずつ更新し、なんとかイギリス滞在期間を延ばしていた。

ある時、友人が見つけてきた「日本人の役者求む」という劇団のオーディションを受けることになり、何か芸を覚えようと、一週間3人で空手の訓練をした。そして3人見事に合格。ツトム・ヤマシタ氏率いる劇団「レッド・ブッタ」は、ロンドン、ヨーロッパを舞台に、年間100回の公演をこなすほどの人気だった。そのため練習も本格的で、劇団に所属していた一年間、ハービーさんはカメラに触ることを禁じられた。

「一年間写真から離れて全く違うことをやってきた。それは自分のキャリアの中でマイナスだろうか、とも考えましたよ。でも生きるためにはお金が必要だし、プロの役者なのでビザも伸びる。その時はイギリスに残ることの方が大事でした」

ビザやお金のためとはいえ、写真から離れ、厳しい稽古に耐えて一生懸命取り組んだ役者としての一年間。それはハービーさん自身にとっては無駄ではなかった。そのことを後に、写真の仕事の現場で身をもって確認することになる。

1990年代初め、ウィリアム・ハートが、ビム・ベンダーズ監督率いる「ベルリン・天使の詩」のロケで来日した。写真嫌いで有名なウィリアム・ハートは、ハービーさんが向けるレンズにもいい顔をしなかったという。

「僕は、彼に『私は昔役者をやってたことがある。だから舞台に立って写真を撮られる側の気持ちと、舞台の上から写真を撮る側の両方の気持ちが分かる。それは、僕が人の足を踏んでしまったとしたら、その人の痛みが分かることと同じで、それが人間のインテリジェンスだと思う』って話したんです。そうしたら『世界で唯一、お前だけは僕のことを撮ってもいい』って言ってくれたんですよ。その時でしたね。『レッド・ブッタ』にいたことは無駄な経験ではなかったって思ったのは」

一年後、「いい加減写真に戻ろう」と劇団をやめたが、役者としての一年間は、ハービーさんに思わぬ自信を与えてくれていた。

「大舞台で、空手のシーンをやって最後に僕がバタンと倒れて死ぬとね、そこでワーって拍手が湧き起るわけ。僕がかつて腰椎カリエスという病気で人並みに運動することもできなかった人間だということを、この中の誰が思うだろうって思ったら、『僕はもう肉体的なコンプレックスを持たなくてもいいんじゃないか』って、はじめて自分を許してあげることができたんです。それは全く予想しなかったことですね」


次号(3/21配信)もお楽しみに!!

写真


柳谷杞一郎のデジタル写真をめぐる冒険
こんにちは、柳谷杞一郎です。

今週は、先週の続き。某誌編集長との「写真」に対する意見の対立についてお話ししたいと思います。よって、再び「デジタル写真」がテーマではありません。ごめんなさい。
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう)
写真の学校/東京写真学園校長。
広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に「写真でわかる<謎への旅>」シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある
東京写真学園プロカメラマンコース研修科のある生徒の作品について某誌編集長と僕の評価は大きく分かれました。

その生徒たちの作品は、モデル撮影によるファッション写真をきっちり1年間続けてきたものです。

某誌編集長は「うまいとは思うけど、新しさがない。普通っぽい。そういう作品なら今までに実績のある人たちに撮ってもらえばいい」という意見です。

当然といえば、当然の意見なのですが、僕の考えは少々違います。「1年かけて、これだけしっかりと作品づくりをしてきたひとは、どんな仕事を頼んでも必ずいい仕事をする。こういう若者にチャンスを与えてやるべきだ」というものです。

ファッション写真の作品を積みあげていくのは大変な作業です。まずモデルが魅力的でなければなりません。写真の基本は、1にモデル、2にモデル、3、4がなくて5にモデルなのです。自分の知り合いの誰か、街で声を掛けた誰かでも撮影は可能ですが、手軽なところでのモデル探しを続けていくと、やがて手詰まりになります。レベルの高い写真には、レベルの高いモデルの確保が必要不可欠です。

第2にヘア&メイクなしでは撮影が成立しません。ヘア&メイクに心が配られていないファッション写真などありえないのです。

第3にスタイリングにセンスがなければなりません。モデルが着てきた服をそのまま撮っていたのでは、ファッション写真とはいいがたいものになってしまいます。

第4にロケーションに気を使わねばなりません。このモデル、このヘア&メイク、このスタイリングに合ったロケーションというものがあります。逆に言えば、このロケーションに合ったモデル、ヘア&メイク、スタイリングがあるというべきかもしれません。ロケーションも、「まぁいいや」と思い始めるとどんどん適当になってしまいます。

誰だってカメラ片手に街をそぞろ歩き、あっちでパチリ、こっちでパチリ、写真を撮って「私ってセンスあるかも」と思っているのは楽しいのです。ストリートスナップを撮っていて「私、カメラマンになりたい」と言っている若者は山ほどいますが、真剣にファッション写真に取り組んでいる人は、極めて少ないというのが現状です。確かに友達や恋人のさりげない日常をスナップにしていれば、それはそれなりに絵になります。でも、そのそれなりに絵になった写真を持って「私にカメラマンとしての仕事をください」と歩きまわっても、なかなか仕事にはなりません。

ファッション写真をそれなりの絵にするには、かなりの努力が必要です。モデル、ヘア&メイク、スタイリング、ロケーションの四つの要素のどのひとつも手を抜くことができません。手を抜いてしまった写真は明らかにわかってしまいます。誤魔化しがきかないのです。だからこそ、僕は某誌編集長が「うまいだけで斬新さがない」といって評価しなかった生徒を高く評価しました。僕は、彼が今後も現在と同様の努力を続けていくことができるなら、数年のうちに年収数千万円になると太鼓判を押しています。

どうしてそこまで評価するのか、次号でもう少し詳しく説明していきたいと思います。
「写真の学校」の教科書
大好況につき、発売5ヶ月で4刷出来!!
はじめて一眼レフを手にする初心者からプロカメラマンを目指す上級者まで、写真が大好きな人が通っている写真の学校がつくった「写真の教科書」。柳谷杞一郎氏が執筆・編集しています
雷鳥社(2004/08)/1‚575円(税込み)





花写真〜上手になるための18のルール〜
写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。柳谷杞一郎氏が執筆・編集に関わっています
雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)

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編 集 後 記
「グロリアス・デイズ」ロマンチックですねぇ。「SAYO」さんは、ハービー山口さんが、かつて自分が恋した人であること、「グロリアス・デイズ」が自分に向けられた歌であることを知っているのでしょうか。その辺が気になります。私が「SAYO」さんだったら、それを知ったらやっぱり嬉しいだろうな〜。20年後、誰かが私のために歌なんて書いてくれないかなぁ、なんて言っている今も私のグロリアスデイズになっているのかな。(Hanaoka Mariko)
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