Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2004.08.30
vol. 10
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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こんにちは。
雷鳥社「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのオオネダです。
写真を撮ること、観ることが好きな人にお届けしているこのメールマガジン。
第一線で活躍する写真家のインタビュー、写真の撮り方のワンポイントレッスンという二つの柱でお届けしています。
先日、インタビューにご登場いただいている坂田栄一郎さんの撮影におじゃましてきました。コミュニケーションを大切にし、人と会話をするように撮る坂田さんの姿はとてもステキでした。今週も、そんな坂田さんの魅力をたっぷりお届けします。

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私が写真を撮るワケ
自然と人間の共生を写真で伝えたい。写真家・坂田栄一郎インタビューVol.4
これまで、写真について、写真を撮ることについて、そして表現することについて様々な角度から写真家・坂田栄一郎さんに語っていただいた。
「私が写真を撮る理由(わけ)」第4回目では、人物写真でのこだわり、そして自然と人間との共生を写真で表現することについて語っていただく。
■ Profile ■
坂田栄一郎(さかたえいいちろう)
1941年東京生まれ。1965年、日本大学芸術学部写真学科卒業後、1966年に渡米。ニューヨークで写真家リチャード・アベドンに師事。1970年、個展『Just Wait』でデビュー。1971年に帰国後、CM、雑誌などを中心に活躍。一方で、週刊誌『AERA』の表紙は、1988年創刊以来担当。撮影した人数は850人を超える。また、1993年には世界でもっとも有名な写真の祭典である「アルル国際写真フェスティバル」に招待され、「アルル名誉市民賞」を受賞。写真集に、『注文のおおい写真館』(流行通信社・1985年)、『Talking Faces』(六耀社・1990年)、『amaranth』(1995年・朝日新聞社)がある。
(C)坂田栄一郎
「PIERCING THE SKY―天を射る」坂田栄一郎展
静謐なモノクロの「人物」と色鮮やかな「自然」が対峙するように表現した、未発表作品約100点を展示。
会期:2004年9月4日〜10月11日
お問い合わせ:東京都写真美術館(TEL:03-3280-0099)
詳細はこちら

ヒクソン・グレイシー(格闘家)(C)坂田栄一郎

「PIERCING THE SKY―天を射る」
7年の歳月をかけて撮りおろされた人と自然の姿に、太古から交わし合ってきた生命の息吹が見える。悲劇的な世界を救う力はどこにあるのか、現代社会で我々に問われていることは何か?警鐘と深い人間愛に満ちた一冊。デザイン・井上嗣也、寄稿文・丸山健二といった豪華ラインナップ。
求龍堂(9月4日の東京都写真美術館の展覧会に合わせ刊行)/価格未定

amaranth
週刊誌『AERA』の創刊から7年間分の肖像写真をまとめた写真集。元大統領、科学者、芸術家など、世界の名だたるリーダーとして活躍してきた人々の素顔をのぞき見るようなできばえになっている
朝日新聞社(1995/11)/8‚155円(税込み)


相手の気持ちをこちらに向ける
『AERA』の表紙を撮り始めて16年。
来日する外国の方も含めて、日本の文化界のビックネームやトレンドとなる人と毎週のように顔を合わせる。これまでに『AERA』の表紙のために撮影した人数はすでに850人を超えている。常に時代の動きに敏感になるような刺激的な仕事をすることについて伺ってみた。

「ビックネームと会う機会はアベドンの時代から慣れていたからね。そういうことによって人に対する気持ち、感じ方というものを学んできたし、だからこそ今の自分があるとは思うよ」

とにかく出会いを一番大切にしているという坂田さん。人生に直接的に関わってくるような人との出会いとは別に、『AERA』の撮影のような一期一会の出会いを通して、坂田さんは人との距離感が近くなってきているのを実感しているという。

「タイムズスクエアにたむろする人や娼婦たちをつかまえて撮っていた時も、その人たちと対峙しながら撮ってきた。その気持ちは変わらないけど、歳をとるにつれてその距離感がもっと近づいてきているね。人の気持ちを自分の方に寄せられるという自信は出てきた」

「今の時代はさ、みんなコミュニケーションが下手だよね。人との距離が遠くなってきている気がする。僕は若いときにその辺を培われてきたんだろうね。みんなもっと外国へ出て、いろいろな人々と交流した方がいいよね」

「もちろん相手に近づいていくのは難しい時もあるし、葛藤もある。2分しか撮影時間がない時だってあるからね。でもやっぱり、どんな人でも人間というのは皆同じだと思っているから。偉い人でもどちらが優位に立つということはない。もちろん撮られる側は、撮る人に支配されているような感覚をもっているかもしれないけど。僕としてはいつも撮らせてもらっているという気持ちがあるから。だから相手の気持ちをこちらに向けようということに一生懸命になるよね。写真って、レンズを向けてシャッターを押せば写ってしまうものだけど、気持ちがこちらに向いているかどうかというところが、僕の写真で一番大事にしているところだから。形だけで撮ることもできるけど、でも僕は違うんだよね」
人と自然の発する“気”をどう受け止めていくか
「このままポートレートを撮り続けていくかは分からないけど、15年くらい前からは、何か問題意識を持って取り組んでいかなきゃいけないなと思い出した。それまではあまり深く考えないで撮っていたんだよね。あのタイムズスクエアの写真も、今になってみれば時代を象徴するような作品として残されているけど、当時はそういう問題意識を抱えて撮っていたわけではないからね」

『注文のおおい写真館』がアルルで名誉市民賞をもらって世界で認められた時、「もうこのシリーズは打ち切ろう」と思ったという。それで始めたのが「amaranth(アマランス)」だった。

「アマランスを始めたころもそうだけど、今の時代は『本当に自分が幸せだな〜』と思って生きている人はなかなかいないんじゃないかな。政治腐敗とか社会の荒廃、環境破壊といったものが、人のエネルギーを奪い取ってしまう。普段生きているといろいろ感じるものがあるでしょ。毎日様々な事件を見聞きする中で、それらは他人事ではない、自分に降りかかってくることってたくさんあるよね。そういう悲劇的な社会に生きている真っ当な人たちに見てもらいたくて写真展をやったの。自然と人間がこれからどう関わって、どう生き延びていくのか。だからただ人物で構成するだけではなくて、人と自然の発する“気”というものをどう受け止めるかということから始まったの」

1995年に開催された個展に寄せられたアンケートの中に「これで生きていけると思った」という若い女性の一言があったという。

「僕の写真を見てそんな風に感じてくれる人がいるから、僕ももっと頑張らなきゃね」

確かに、日常生活をおくる中で、誰もが疲れたり落ち込んだりすることがあると思う。そんな中で写真と対峙することによって勇気づけられたり、魂をゆさぶられたりすることもあるだろう。そして見る人の思いが写真家の魂を揺さぶることも。
次号(9/6配信)でいよいよ最終回です

写真


柳谷杞一郎の写真上達のための100のルール
こんにちは。
柳谷杞一郎です。
「Photo365MAGAZINE」の読者のために、写真上達のためのヒントを毎回少しずつご紹介しています。まずスタートから18回は、『花写真〜上手になるための18のルール』(雷鳥社)という本で一度書いていたことをおさらいしていきます(Photo365MAGAZINE版オリジナル原稿に手直しした部分もあります)。
今回でいよいよ10回目を迎えました。
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう)
写真の学校/東京写真学園主宰。
1957年広島県生まれ。広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に「写真でわかる<謎への旅>」シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある




「写真の学校」の教科書
はじめて一眼レフを手にする初心者からプロカメラマン目指す上級者まで、写真が大好きな人が通っている写真の学校がつくった「写真の教科書」。作例の写真が豊富に掲載されていて、写真を本気ではじめる人にはうってつけの1冊
雷鳥社/1‚575円(税込み)


東京看板娘(ガール)
東京都内、東京近郊で商売を営む「看板娘」にスポットをあてた写真集。一口に「看板娘」といっても、家の手伝い、老舗の後継ぎ、自分でお店を構えたオーナー……と様々。本書片手に掲載店を周り、「看板娘」を訪ねるのもひとつの楽しみ方。全店舗リスト掲載。
雷鳥社/2‚940円(税込み)
rule10 光を使いこなす

 注意深く、光を観察する。
 木漏れ日や強い反射など
 光の織りなす美しさを見つけたら
 そこが撮影のポイントだ。


被写体に対して撮影者の背中側からまっすぐに光のあたっている状態が順光である。被写体をまんべんなく光が照らしているので安定感があるともいえるが、まったく影ができず立体感のない写真となってしまう。観光地での記念写真には向いているかもしれないが、写真でなにかを表現しようとするなら、平板な光では面白くないと考えた方がいいかもしれない。順光が一番という常識を捨てたところから、あなたの写真は新しい展開をみせてくれるはずだ。

風景カメラマンは早朝と夕方が勝負時である。太陽が低い位置にあった方が、やわらかで魅力的な光と影をつくってくれやすいからだ。キラキラした光の中、ふわふわした光の中、透きとおるような光の中で写真を撮ることが成功をもたらす。お昼になって、被写体の真上から光が射し始めると、理想的な光の状態に出会うことが難しくなってくる。被写体の質感や立体感を出すのは、真上からの光や正面からの光ではなく斜めから、あるいは横からの光だからである。


-Kiichiro’s Voice-

プロカメラマンは、どうも撮影スタジオで大型ストロボをバシバシ発光させているという印象が強いけれど、別にスタジオでの撮影がレベルが高いからという理由で、そうしているわけではない。

ほとんどのカメラマンは、ストロボの光でつくった人工光よりも、自然光の方が好きなはずだ。でも、自然というヤツは、どんな天才カメラマンであったとしても思いどおりに操ることができるわけではない。3時間しか撮影時間のないタレントさんの撮影を外ロケ(屋外撮影)でやろうとして、雨に降られたらおしまいである。晴れたらこのロケーション、曇ったらこのロケーション、雨だったらこのロケーションと三段がまえでロケハン(ロケ地を事前に選んでおくこと)をしておけばいいのかもしれないが、そんな都合のいい場所はそうそうあるものじゃない。どうしても安全、確実なスタジオ撮影を選ぶことが多くなるわけだ。なにしろ、スタジオにはライティング機材がいっぱい。自分の思いどおりの光をつくり出すことが可能なのだ。

でも、本当は自然の美しさにはかなわない、というのも事実。スタジオでのカメラマンの仕事がライティングを決めることだとしたら、外で撮影する時のカメラマンの一番の仕事は光の織りなす美しさの発見なのである。
花写真〜上手になるための18のルール〜/監修・写真の学校/東京写真学園
写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。
雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)




編 集 後 記
人と自然の持つ“気”。いいですね〜。「金は天下のまわりもの」といいますが、水もエネルギーも私たちの血液も、すべて循環しているんですよね。それがいい“気”であっても悪い“気”であっても。私も自分のまわりにあるいいエネルギーをたくさん吸収して、そしていいエネルギーを発していきたいものです。(Hanaoka Mariko)
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