Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2007.08.20
vol. 110
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
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みなさん、元気にお過ごしですか? 写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週は写真家・梶井照陰さんの最終回です。どうぞお楽しみに!!

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私が写真を撮るワケ
撮りたいものがあるから撮り続ける 写真家・梶井照陰インタビューvol.3
ベトナム、カンボジア、そして、パプア・ニューギニアなどを旅し、密教や信仰を取材し、写真展や新聞などで発表していた梶井さんですが、また転機が訪れます。最終回となる今週は、佐渡で住職をするようになってからのお話です。好きなこと、やりたいことをとことん突き詰める、そんな梶井さんの写真表現は、まだまだ続きます。最終回もどうぞお楽しみに!!
■ Profile ■
梶井照陰(かじいしょういん)
1976年生まれ。新潟出身。1999年高野山大学密教学科卒業。高野山での修行後、ベトナム、カンボジア、タイ、パプア・ニューギニア、イギリスなどを訪ね取材を重ねる。16歳より写真雑誌などで作品を発表しはじめ、2004年には、第1回フォイル・アワードを受賞、写真集『NAMI』を出版。本作で2005年度日本写真協会新人賞を受賞する。現在は、佐渡島にて僧侶をしながら、写真家として活動。出版社フォイルのWEBや「春秋」での連載など執筆でも活躍中。
Syoin Kajii's Website
『NAMI』
フォイル/2007年7月
2‚940円






渡英、帰国、そして住職に
ニューギニアから戻った梶井さんが次に向かったのは、イギリスだった。いわゆる語学留学で、初めから長期滞在のつもりでイギリスに渡ったという。

「それまでは、アジアを中心に仏教や精霊信仰ばかりを見てきたので、ヨーロッパの方にも少し目を向けたいなと思って…。イギリスへ行ったのは宗教とは関係なく、単純に語学力をつけたいなと思ったからです。でも僕はやっぱりアジアの方が好きですね。アジアのごちゃごちゃした感じが…」

「実際には、そんなに長く滞在していたわけではないんですよ。僕が渡英してしばらくして、祖父の癌が発覚してしまって、それで急遽帰国し、僕がお寺を継ぐことになったんです」

「帰国してすぐに、佐渡にある祖父のお寺に入り、祖父の見習から始めました。同じ真言宗といっても地域によってやり方が様々で、更に佐渡の中でも、地域や村によって色々と違いがあるんです。その辺のことは、やはり祖父から教えてもらわないと分からないですからね」

予定外の帰国と、お寺の住職継承となったが、もしもこのような事態にならずイギリスに滞在していたとしたら、他の目的や目標とするものがあったのだろうか。

「大学で密教学科を選んだ時点から、やはり仏の道に…というようには考えていましたから、このような形で祖父の後を継ぐことになったときも、特に抵抗や違和感はなかったですね」

「祖父のお寺に来てからは、もちろん毎日の諸々のお勤めがありますが、写真を撮る時間もたくさんできました。波を撮り始めたのも、佐渡に渡ってからですから」

何故“波”を撮り始めたのか?

「なぜか…撮りたいと思ったので…(笑)。言葉で説明してしまうと、どうしても何か嘘っぽくなってしまう気がするんですよね。本当に、ただ波を見ていて“撮りたいな”と思ったのがきっかけであって、理屈で説明できるようなものではないんです」
NAMI
住職という仕事の傍らで、“波”という新しいテーマで写真を撮り始めた。かつて、来る日も来る日も昆虫を追いかけ、生態観察をしていたように、波に魅せられた梶井さんは、時間を忘れて撮影に没頭していった。

「撮影する時間帯はまちまちです。夕陽をバックに撮ったり、日中のうちに撮影したり。一日中海に入って撮っていることもありますよ。冬は、シャッターを切る指が動かなくなるまで海辺で待っていることもあります」

「佐渡の冬は、30メートルくらいの風が吹くこともあって、そうすると海が見えなくなるくらいに波しぶきが立つんです。でも、その風が止む瞬間があって、その時に大きな波が立つことがある。そこを狙って撮るんですよ。波の高さだけではなくて、見た感覚でいいなと思う波を…」

「撮影には200〜400ミリの望遠レンズをよく使いますが、200ミリが一番多いかな。岩場から撮ったり、海に潜って撮ったり。1メートルくらいの波であれば潜りますよ。そのくらいなら、そんなに怖くないですから」

一年を通して海を見続けていくうちに、天候や風の動きによって、撮りたい波を狙っていくようになっていったという。

「風の方向で、波が立つ位置も変わってくるんですよ。島の西の方から風が吹く時は、波がこう立ってくるとか…。風が急に変わるときにも波が立ったりするので、それに合わせて撮影の場所を選びます。風が止んで、一瞬晴れたり、ものすごい風が吹いて見えなくなったり…その一瞬の晴れを待つんです」

「雲の流れ方も同じですね。雲は薄くなったり濃くなったりするんですが、濃い雲が過ぎ去って、薄い雲が流れてくると風が止まったりする。気圧の関係なんでしょうね。冬の黒い雲の下では雪が一気に降って、その雲が去ると雪が止んで薄い雲が広がる。ずっと同じように雪が降り続いたり、同じような風が吹き続けるということはないんですよね。吹いたり止んだり、降ったり止んだり…」

「もちろん、初めはそういう感覚が分からなかったし、全く予測できませんでしたよ。風が吹くともう波が見えなくなってしまうし、風と風の合間の静かになる瞬間や、そのパターンが分からないから、ただひたすらシャッターを切っていました。でも、何度も撮り続けていくうちに、風から波をよむという直感力がついてきたと思います」

流動的なもの、無形のものというのは、普段何気なく見ているだけでは全く予測がつかない。しかし、毎日毎日そのものに向き合っていくことで、そこにある何らかのパターンや傾向といったものが、感覚的に分かってくるのだろう。

「でも、全てが予測できてしまったらつまらないですよね。“これはいいな”というカットは、撮った瞬間に分かるときもありますけど、予測できないところの偶然性みたいなものが面白いし、そういう写真が撮りたいです」

風や波をよみ、最善の注意を払いながら撮影に望んではいても、やはり相手は自然。予測できないことは多々ある。梶井さんも、波にさらわれそうになったことが何度かあるという。

「今では、カメラを防水用のBOXに入れて潜りますが、以前はカメラに潮水が入ってしまったこともありました。すぐにショウノウ(※ショウノウ:一般的に衣類の防虫剤、防腐剤などに使用されている特異な芳香のある無色透明な板状結晶)の中に入れたら、なんとか使えるように戻りましたけどね(笑)。昔読んだ海野和男さんの本で、インドネシアで川にカメラを落としてしまったときに、カメラをショウノウの中に入れて乾燥させたら、元に戻ったって書いてあったんです。それで2回くらいは直りましたよ」

理屈ではなく、好きだから…が出発点
梶井さんにとって写真を撮ることは、お寺の住職であることやその仕事とは、全く別物として位置づけられているのだろうか。

「お経を読んで集中する感じと、写真を撮るときに集中する感じというのは、最終的には同じだと思うんです。何かを突き詰めていって、そこに集中するという意味では、写真やお経に限らず、何か共通している部分があると思う。でも、僕は住職としての仕事と写真を撮るということを、あまり繋げて考えたくはないんですよね」

梶井さんは作品作りにおいて、他の作家を意識することはあまりないという。昆虫採集、山登り、写真を撮ること、密教に興味を抱いたことも、全て“理屈ではなく、ただ好きだから…”というところに出発点があり、いつでも自分の内側から出てくる感情や感覚に、素直に向き合ってきたのだろう。

次に撮ってみたいテーマは?

「今、フォイルのWEBで集落の連載をしているんですが、この集落の撮影は今後も続けていきたいですね。今、日本各地には消え行こうとしている集落がたくさんあるんです。限界集落といって、65歳以上の高齢者が集落人口の50%以上を占め、一人暮らしのお年寄りが増えている集落が、国内に数千とあるんです」

「当たり前のことですが、それぞれの集落には、その村でおこった出来事や人々の生活の中の何気ないエピソードがあります。村の若い人たちが都会に出て行き、過疎化で村が無くなっていってしまう中で、そこに村が存在していたということ、そこに生活する人たちがいたということが、このまま忘れ去られていっていいのかな…という、そんな思いから撮り始めました」

最後に、これから写真家になりたい人へのメッセージを伺った。

「写真を撮ることは誰にでもできますが、やはり撮りたいものを撮り続けていくことが大切だと思います。作家になるということは、何か表現したいもの、発表したいものがあるからこそなのだと思います」

梶井さんは、写真作家として、常に積極的に新しいテーマを見つけていかなければという思いでいるのか。それとも、撮りたいものが自然と見つかったときに、それをテーマとして撮っていこうというスタンスなのだろうか。

「両方ですね。撮りたいテーマがむこうからやってくるときもあれば、新しいテーマを自分で見つけなければというときもあります」


梶井さん、貴重なお話
本当にありがとうございました。
次の作品も楽しみにしております!!

次回は9月からの配信です。
インタビューには女性の新進気鋭の写真家が登場します。
みなさん、どうぞお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展1】
新美敬子写真展
「犬が好き、猫が好き!」
〜世界を旅して出会った、愛しきものたち〜

■9月9日(日)まで 期間中無休 
■10:30〜18:00まで  
エプソンイメージングギャラリー エプサイト 
 新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル1階
■サイン会9月1日(土) 15:00−16:00 
 詳細はエプサイトまで03-3345-9881


【写真展2】
大室徹也写真展「New Composition」
■8月 21日 (火)〜9月 8日 (土)まで 
■平日 11:00〜19:00 土曜日 11:00〜18:00
 日・祝休館 
エモン・フォトギャラリー
 港区南麻布5-11-12 Togo Blog.‚B1 


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編 集 後 記
こんにちは。猛暑のお盆休みはいかがお過ごしでしたか? 私は、数日かけて部屋の大掃除をしました。今回は、今まで捨てられずにいたものも思い切って捨て、相当量のゴミが出ました。古いものを捨てることで、新しいものが入ってくるんですよね! そして部屋をキレイにすると、いい“気”が流れてくるらしいですよ。部屋もスッキリ、心も軽くなりました。さて、全3回にわたる梶井さんのインタビューはいかがでしたか? まだお若いのですが、とても心の落ち着いた方だなぁと思いました。(Hanaoka Mariko)
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