Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2007.08.06
vol. 109
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
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暑中お見舞い申し上げます。暑い日が続いておりますので、みなさまご自愛ください。写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週は写真家・梶井照陰さんの2週目です。どうぞお楽しみに!!
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私が写真を撮るワケ
撮りたいものがあるから撮り続ける 写真家・梶井照陰インタビューvol.2
昆虫採集、登山、そして写真。好きなことに夢中になった少年時代を過ごした梶井さんがいよいよ新潟の土地を離れ、大学へ進学します。進学先は密教学科。そのきっかけとは何だったのでしょう。
■ Profile ■
梶井照陰(かじいしょういん)
1976年生まれ。新潟出身。1999年高野山大学密教学科卒業。高野山での修行後、ベトナム、カンボジア、タイ、パプア・ニューギニア、イギリスなどを訪ね取材を重ねる。16歳より写真雑誌などで作品を発表しはじめ、2004年には、第1回フォイル・アワードを受賞、写真集『NAMI』を出版。本作で2005年度日本写真協会新人賞を受賞する。現在は、佐渡島にて僧侶をしながら、写真家として活動。出版社フォイルのWEBや「春秋」での連載など執筆でも活躍中。

Syoin Kajii's Website
『NAMI』
フォイル/2007年7月
2‚940円





ただ惹かれるものがあったから
高校を卒業した梶井さんは、高野山大学密教学科へと進学。昆虫の生態系に関わる学科でもなく、写真学科でもない。密教学科、つまり仏教について学ぶ学科へと進学したのだった。

梶井さんの祖父は、佐渡島にある真言宗のお寺の住職をしていた。本来は世襲制で継いでいく必要はないとのことで、父は建築士の道を選んでいた。梶井さんは祖父から見て三代目にあたるが、仏道に興味を抱いたのは、やはり祖父の影響が大きかったのだろうか。

「祖父はお寺の住職でしたが、実際に僕が祖父やお寺に接するのは、一年のうちのお盆と正月くらいだったんです。祖父の家に遊びに行ったときには、祖父と一緒に本堂に座ったり、お寺の仏様を見たり、時には祖父について檀家さんの家に挨拶をしたりしていたぐらいで…」

「祖父がお寺の住職だから僕も…というような意識はなかった。昆虫に夢中になったときもそうなんですが、理屈ではなくて、ただその道に何か惹かれるものがあったからなんですよね。だから密教学科を選んだ確かな理由というのは、自分でも分からないです(笑)。でも、全てを受け入れるというような…基本的な仏教の考え方は知っていたので、そういうことも含めて、何か漠然と惹かれるものがあったんだと思います」

「密教というのは、考え方がとても面白いんですよ。仏陀だけが仏様というのではなく、宇宙全体が仏様というような…広い考え方なんです。仏陀も宇宙の中のひとつであって、仏陀は宇宙を通して教えを得て悟りを啓いた。だから、その大本となる宇宙を信仰する、宇宙からの教えに耳を傾けようというのが密教なんです。間接的に仏陀を通して学ぶというよりも、直接宇宙からという考え方ですね」

大学時代、梶井さんはお寺の宿坊に住み込みで修行をしていたという。朝起きると、掃除や読経などの朝のお勤めをし、昼間は大学へ通った。

「宿坊には、一般のお客様も泊まりに来るので、お膳を出したり、布団をしいたりといったお勤めもありました。普通に下宿することもできたんですが、お寺に住み込んだ方が仏教についての勉強ができるので、それで宿坊を選んだんです」

密教僧の修行の中には、伝法灌頂(でんぼうかんじょう※密教を修行したすぐれた行者に、阿闍梨の位を許すための灌頂で、密教灌頂の中で最も重要な儀式)を受けるための加行がある。加行には、十八道、金剛界、胎蔵界、護摩の4種があるため、四度加行とも呼ばれていて、宗派によって日数は異なるが、通常30日から100日くらいかけて行われる。梶井さんが在学中に行ったのは、100日間の修行を行う、100日加行だった。

「加行期間中は朝は2:30〜3:30に起きて、お経を唱える。そして掃除をして、またお経を唱えて…という感じで、それで一日が終わっていくんです。初夜行や日中行、作務など…とにかく100日間ずっとお寺にこもって、ひたすら修行をする。外部からは完全に隔離されているような状態だったので、“富士山が爆発した”という情報すら信じてしまうくらいでしたよ(笑)」

100日の加行中はひたすら修行で、写真を撮る時間はなかったのだろうか。

「100日の加行中は無理ですが、加行の無いときは、夜のお勤めが終わってからよく一人で外に出てカエルの写真なんかを撮っていました。僕が行っていたお寺には大きな池がって、そこには夜になるとモリアオガエルが来ていたんです」
仏教、信仰、より深いところを求めアジアへ
昆虫の記録写真から始まり、大学生になっても変わらず虫の写真を中心に撮影していた梶井さんだったが、ベトナム、カンボジアなどアジア諸国への旅に出た際には、その土地で暮らす人々にも自然とレンズが向いていたという。

「大学3年生のときに、論文を書くためにベトナムに行ったんです。最初はベトナムだけのつもりだったんですが、結局カンボジア、タイ…と、密教に関わりのあるアジアの地を廻ってきました。あの辺りは、かつてのクメール帝国が栄えた場所なんですよね」

「ベトナムやカンボジアの辺りには、10世紀前後に密教が信仰されていたんです。一時的に密教が入ってきたけど、その後すぐに上座仏教に変わっていってしまった。カンボジアの『プリヤヴィヒヤ遺跡』や『バンテアイチュマール遺跡』などを見てまわりました。何故この地に密教が入ってきたのか。その後何故、上座仏教にとってかわってしまったのか…そういったことを調べていたんです。最近では、また新しい発見があって、当時の説とは少し変わってきたみたいですけどね」

在学中は、数回に渡ってカンボジアへ足を運び、密教遺跡を訪ねて廻った。大学を卒業後は、仏教国だけではなく、パプア・ニューギニアへ渡り、一番最近ではアルゼンチンへも行っている。

「パプア・ニューギニアには古くからの精霊信仰が残っているんです。精霊信仰とは、アニミズム的なもので、いわば宗教の大本のようなものだと思うんです。だから仏教とは直接的には関係ないけれど、突き詰めていけば一緒のような気がするんですよね」

「また、ニューギニア島には“シンシン”というお祭りがあるんです。部族の原始的な踊りで、ひたすら踊り続けて、踊りを通して通常とは違った意識になっていく。仏教でも、集中して世界に入り込んでいくことによって、邪念をなくして、普段の意識とは違うところに入っていくことがあるんですよ」

「そして僕がニューギニア島へ行った一番の目的は、セピック川上流にあるセピックアートでした」

セピック川はニューギニア島中央を走る山脈地帯からインドネシア領の一部をまたぎ、ビスマルク海に注ぐ川で、ニューギニア島随一の大河。精霊信仰による独特な風習や建物、彫刻などは、パプア・ニューギニアのプリミティブアートの中でも特に「セピックアート」と呼ばれている。

「精霊の像は、川に浮いていた流木を削って作っていて、バリエーションもすごく豊富なんですよ」

このベトナムからパプア・ニューギニアの旅で撮影した写真は、帰国後に地元の新聞で連載されることになった。

「高校生のころから何回か写真展を開催していて、ベトナム、カンボジアから帰ってきたときには、地元の新潟で映写会のようなものを開催したんです。現地で調べてきた密教についての研究発表のようなものも兼ねて、スライドで見せながら説明していきました。その時にたまたま来てくださった新聞社の方がいたんですね。それからお付き合いがあって、パプア・ニューギニアから帰ってきた時も、その方から新聞に連載してみないかというお話をもらったんです。いわゆる紀行ものですね」


次回(8/20配信号)もどうぞお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展1】
藤岡直樹写真展
「記憶の彼方」

■8月19日(日)まで 
入場無料 日曜・祝日休館
■平日 11:00〜19:00 土曜日 11:00〜18:00
エモン・フォトギャラリー
東京都港区南麻布5-11-12 Togo Blog.‚B1

【写真展2】
西村豊 「森の妖精 ヤマネ」
■10月21日(日)まで 
火休(祝日は開館、8月は無休)
■10:00〜18:00(入館は17:30まで)
■入場料 大人800円 学生600円
清里フォトアートミュージアム 
山梨県北巨摩郡高根町清里3545

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編 集 後 記
暑いですね〜。さすがに8月、夏らしくなってきました。仕事さえなければ、外でダラダラと汗を流しながら歩き続けるのも悪くない、と思うのですが…そういうわけにはいきません。さて、梶井さんは仏道に進むべく密教大学へ、そしてそのルーツを探る旅へと出ていきました。同じ旅をするのでも、何かひとつのテーマを持ってまわるのっていいですね。私はそういう旅の仕方をしたことがないかもしれません。いつかそんな旅を…。梶井さんのインタビューは次回で最後です。お楽しみに☆(Hanaoka Mariko)
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