Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2007.07.16
vol. 107
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
画像が表示されない場合
みなさん、元気にお過ごしですか? 写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週は写真家・内藤忠行さん4週目、最終回です。メッセージもありますので、どうぞお楽しみに!!
::: PR ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
デジタル写真の学校|東京写真学園
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: PR :::

Photo365
MAGAZINES

メールアドレスの
登録・解除・変更
バックナンバー

私が写真を撮るワケ
ジャズを愛し、ジャズ・スピリットを写真で表現し続ける写真家・内藤忠行インタビューvol.4
ジャズとアフリカそして自然、それぞれの深いつながりを写真で表現し、精力的に発表しつづけてきた内藤さん。最終回となる今週は自身のヒーロー、人生を変えたあのジャズの神様、マイルス・デイビスとのエピソードをお届けいたします。写真家を目指す人へのアドバイスもありますので、どうぞお見逃しなく!!
■ Profile ■
内藤忠行(ないとうただゆき)
1941年、東京浅草生まれ。1958年マイルス・デイビスの音、表現に憧れ、ジャズに傾倒。写真による映像化を目指し、ジャズと写真の本質と精神を学びはじめる。その後、ジャズライブのステージ写真などを撮り続け、数々の作品を発表。独自のジャズと写真世界を作り上げる。また、人間や動物、自然をモチーフにした作品でもその斬新かつ独創的な世界感を展開。海外でも高く評価され、熱烈なコレクターを持つ。「NABESAN」、「アフリカの旅」「アフリカの歌」「宇宙のかたち―日本の庭」「ZEBRA」「SAKURA」「ブルー・ロータス」などの写真集はじめ、写真展、映像作品なども多数。多彩な才能を発揮し続ける。
Tadayuki Naitoh Official Website
マイルス・デイビスの『枯葉』
内藤さんの写真人生を語る上では欠かすことのできない、ジャズトランペット奏者マイルス・デイビス。内藤さんがはじめてマイルスを撮ったのは、1971年のニューヨーク滞在時のことだった。
「もう、本当にドキドキしたよ(笑)」

「マイルスはね、一瞬少年のような顔になったかと思うと、次の瞬間老人のような顔つきになるんですよ。本当に信じられないくらい変わるの」

そういって数枚のマイルスの写真を並べてくれたが、なるほど確かに、それらが同じ時に撮られた写真とは思えない。少年から青年、そして老人と、たくさんの顔を併せ持っているというのは、とても的を得た表現だ。
内藤さんは、17歳のときに聴いて衝撃を受けた、マイルスの『枯葉』をオーディオにセットして流してくれた(マイルス・デイビスの「枯葉」のCDを聴きながら…)。

「なぜ、この曲が僕の原点といえるかというと、『ZEBRA』とか『SAKURA-COSM』も、基本的にはこのスタイルと同じなんだよね。最初はできる限りストレートにきちんと撮る。それは被写体の内面に迫ることですよ。そこからいかにオリジナルなスタイルで展開していくか、『ZEBRA』は世界で誰もやらなかった冒険をしてしまった訳です、まだ続いていますけどね」
「僕の中では、表現の方法は何でもありだと思っているんです。表現の可能性はあらゆるところに秘められている。デジタル合成も僕は否定していないですよ。僕の場合は、アナログを徹底的に追求していった結果、アナログ表現の限界までいってしまったんです。考えうるあらゆるテクニックを使って、自分のイメージを形にしようと試みて、やり尽くしてしまった。だから僕は、10数年前からデジタル技術を使った合成も取り入れているんです」
「音楽も、写真も、時代とともに常に変化しているでしょ。それはテクノロジーの変化によるものもある。電気楽器が出てきたときに、ロックミュージシャンたちはそれをいち早く取り入れたけど、ジャズ界ではほとんど誰も興味をしめそうとしなかった。そんな中で、マイルスは、「ワウワウ」というイコライザーを使って演奏を始め、ハービー・ハンコックやチック・コリアに電気ピアノを弾かせたのですよ。彼は常に新しい音楽を作ろうとしていたからです」

現在の写真表現のデジタル化の中で、デジタル画像のクオリティーやプリンター出力について、未だに肯定できない人も多数いるのが事実だ。

しかし、内藤さんは違った。“写真とは”云々ではなく、“いい写真とは何か、自分のイメージの先にあるものをいかに表現できるか”を追求してきた。それが、マイルスの『枯葉』を聴いたときの衝撃と、進化と発展を今でも“原点”とする所以なのだろう。

写真的に世界を見る
最後に、カメラマンを目指す人へのメッセージを伺った。

「やはり、写真家だからといって写真のことしか知らないというのはよくない。何でもそうだけど、色んな角度から見ることが大事なんですね。音楽にしても写真にしても、彫刻にしても表現方法は異なるけれど、突き詰めていったとき乗り越えていかなければならないことは共通しているんですよ」

「マイルスが言っているんだけど、『あらゆるスタイルに対応できないとダメだ』って。例えばジャムセッションのときには、どんなスタイルでも即興で音を出せるように、常に先の先までよんでいけないとダメだってね。それは、写真でも同じなんでいつも気にしているよ」

「結局、写真もライブでしょ。例えば、風景撮影だって、撮影のポイントに向かうまでの間に、どのレンズでどのように撮るか…と予測する。そのためには、眼が望遠レンズになったり、ワイドレンズになったり…つまり写真的に世界を見ることが大事なんだよね。印画紙に焼き付けたときのイメージでものを見る。そうしないと、普通の人が何気なく見ているものと同じでしょ。一見何でもないような風景の中に、実はものすごく写真的な世界が存在しているんですよ」
「それから自分の写真のレベルを上げていくには、いい写真をたくさん見ること。写真には本当に色んな表現があって、誰でも自分のフィーリングに合うものは好きだし、合わないものは理解できないこともある。でも、感覚的には理解できなくても、何故その写真が評価されるのか、評論家の意見を読むなどして、左脳で理解すればいいんですよ、でも100%信用してはいけませんよ。自分の感覚を信じなければ作品は生まれませんからね。」

経験しないものは“無”と同じ
「僕は、昔はいつでも先を先をって見ていて、立ち止まって過去の話をしたりするのが嫌いだったんです。でも最近はね、歳のせいかな(笑)、やっぱり次の世代の人たちに教えていかないといけないかなって思うんですよね。僕自身が何のために写真を撮ってきたのかなって考えた時に、自然のすばらしさや創造することの意味を伝えるだけではなくて、やっぱり基本には写真の楽しさがあったんだなぁと今は思っているんです」

「今までは、“写真を見れば分かるだろう”という感じで何の説明もしようとしなかった。でも、ここ7、8年くらいかな、もう少し優しくなろうかなという自分の心の変化があるんですよね(笑)」

「ただ、今の若い子たちを見ていると、僕たちの頃とはやっぱり違うよね。もちろん時代が変化しているから、新しい感覚が目覚めてきているのかもしれない…。でも、あまりにもスピリチュアルが無さ過ぎるって思うな。ふわぁ〜っとしていて、気持ちのいい写真なのかもしれないけど…でもその中に、もう少しスピリチュアルな世界があればいいのにね」

「マイルスは、人種差別の中で虐げられてきたから、当然、白人に対する反発心はすごかったんですね。そういった彼のバックグラウンドにあるスピリットは、彼の音楽にそのまま表れていた。“俺の音楽は、白人なんかにできるわけはない!”ってね。そういう意味では、今のジャズを聞いているとね、すごく上手なんだけど、何かもの足りないって感じることがあるんですよ。それは写真の世界についてもいえることなんです」
「確かに、時代の流れや、社会の変化というのはどうにもならない。でも、人間って、知らないものは創造できないんだよね。体験しない限り創造できないものがたくさんあるんです。経験しないものは無だから。肉体的な体験ができなければ、過去や未来についての本を読むなりして想像するしかない。でも、それすらしない人もたくさんいるんですよ。そうすると、どうしても表現が薄くなってしまうんですよね」

子供のころから大好きだった音楽や自然。そこからインスパイアされるフィーリングや、沸き起こってくる映像を表現したいという思いではじめた。マイルス・デイビスの『枯葉』を聴きながら内藤さんが言った、こんなひと言が印象的だった。

「僕はね、やっぱり写真を一番愛しているかもしれないな。他の何よりも一番エネルギーを使っている。今でも写真に夢中ですよ、それは他の方法より自分の心の内を表現できるからですよ。」 
この言葉の中に、内藤さんがこれまで憧れ、求め、創造してきたもの全てに対する思いが集約されているような気がする。
内藤さんのインタビューは今週で最終回です。
インタビューで貴重なお話をいただいただけでなく、
記事製作にもいろいろご協力をいただき、
内藤さん、本当にありがとうございました。
みなさん、次週もどうぞお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP
 
【写真集】
吉永マサユキ・森山大道
フォトワークショップ resist 写真集
Resist photo workshop vol.01
■B5変型版 162ページ
■2‚100円(税込)
■発行元 resist写真集制作室
■発行所 ルーニィ・247フォトグラフィ

【写真展1】
西村陽一郎写真展
「青い花」
■7月22日(日)まで 月休 
■12:00〜19:00 最終日は16:00まで
ルーニィ・247フォトグラフィ
東京都新宿区四谷4-11 みすずビル1F

【写真展2】
古屋誠一写真展 Im fluss 流れゆく
■8月3日(金)まで 月休
■12:00〜20:00
RAT HOLE GALLERY
東京都港区南青山5-5-3 B1F

【写真展3】
日本の写真表現を新たに切り拓いた『VIVO』展
■7月31日(火)まで 会期中無休
■10:00〜20:00
写大ギャラリー 
東京都中野区本町 2-9-5 東京工芸大学中野キャンパス内
::: PR ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
編集の学校/文章の学校
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: PR :::

編 集 後 記
こんにちは。海の向こうから失礼します。さて、全号から少し間が空いていましたが、内藤さんのインタビュー最終回はいかがでしたか?記事の最後にも書きましたが、「写真を一番愛している」と、何の迷いもなく言える内藤さんが羨ましくもありました。私がいつか60歳を過ぎたとき、それまで自分がやってきたことや経験してきたことを通して、何をもって幸せと思っているのか…。それは結果論であって、今から考えても分かる術もないですが、やはり何気なく過ぎていくような毎日の積み重ねが表れてくるのでしょうね。次回は、新進気鋭の写真家が登場です!(Hanaoka Mariko)
問 い 合 わ せ
雷鳥社マガジン
URL: http://www.raichosha.co.jp/mm/
 広告のお問い合わせ: http://www.raichosha.co.jp/mm/ad.html
ご意見・ご感想: photo@raichosha.co.jp
登録の解除をご希望の方は、下記のURLによりお願いします。
  http://www.raichosha.co.jp/mm/photo.html
メールマガジンにご登録いただいていらっしゃる方々には雷鳥社より、不定期で新刊案内等を自動的に配信させていただきます。どうぞよろしくお願い致します。
「Photo 365 MAGAZINE」に掲載された記事の無断転載を禁じます。
Copyright. © 2004- Raicho-sha All Rights Reserved.