Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2007.03.19
vol. 102
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
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みなさん、元気にお過ごしですか? 写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週は写真家・野町和嘉さんの3週目です。どうぞお楽しみに!!
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私が写真を撮るワケ
人々の暮らしと心の奥にある信仰を見つめ、表現し続けたい。写真家・野町和嘉 インタビューvol.3
カメラマンのアシスタントからスタートし、その後独立。広告など仕事は順調だったが、何故か“これが自分の仕事だ”という意識は持てなかったという。そんな中、仲間と行った旅行で、サハラ砂漠という圧倒的な世界に出会った野町さん。ドキュメンタリー写真を撮るきっかけになった出来事でした。サハラ砂漠に魅了された、その後の野町さんの興味はどのように展開していったのか。
■ Profile ■
野町和嘉(のまちかずよし)
高知県生まれ。写真家・杵島隆氏に師事。1971年フリーの写真家に。サハラ砂漠に旅したことがきっかけとなってドキュメンタリー写真を撮る。アフリカにはじまり、中近東、アジア、中国、チベット等で取材を続け、写真展、写真集などで作品を数多く発表。土門拳賞・芸術選奨文部大臣新人賞など多数受賞。最新作には『地球巡礼』新潮社(2006年11月)、「名作写真館19 野町和嘉」小学館(2006年7月)。
オフィシャルサイト
『SAHARA サハラ−砂と空の間で』
平凡社/1978年
6‚000円




















『SINAI 聖書の旅−モーセの足跡を追って』
平凡社/1979年
6‚000円




















『サハラ悠遠』
岩波書店/1983年
5‚800円




















『モロッコ』
岩波書店 キヤノンクラブ/1987年
4‚200円




















『ナイル』
情報センター出版局/1989年
3‚700円

強靭に生きる人々のバックボーンにある“イスラム”
サハラの想像を絶するような光景に後ろ髪をひかれながらも、日本に帰国した野町さんだが、その翌年1973年には、本格的なサハラでの撮影をスタートさせていた。そして、翌年、翌々年と通い続け、日本からはるか地球の彼方にあるアフリカの写真を撮り続けていた。

「もちろん日本での広告の仕事も続けていましたよ。お金を貯めてはサハラに飛んで…と、その繰り返しですよ。でもそれを続けていくうちに、アフリカでの写真も少しずつお金になるようになってきたんです」

サハラで撮りたかったテーマは?

「やっぱり最初は、風景でしたね。なんといっても一番最初に衝撃を受けたあの砂漠の圧倒的なスケールに自然とレンズが向きました」

「でも、当然のことですが、ただ荒涼とした砂漠の地にも人がいて、生活があるわけです。当時はまだ何も見えていなかったんだけど、あの過酷な環境に住む人たちというのは、いったい何を心の糧に生きているんだろうって、漠然とは思っていました」

そして、取材を続けていくうちに見えてきたのは、彼らが生きていく上でのバックボーンである“信仰”、イスラム教だった。

「無宗教といわれている日本に住んでいると、宗教とか神といった感覚って、なかなか分からないと思うんですよ。生活の中に、信仰が根付いていないですからね」

「例えば、砂漠の中にオアシスがあるでしょ。砂漠の民にとって、“水”というのは命そのものなわけですよ。だから、圧倒的な不毛のなかでオアシスがそこにあるということは、彼らにとっては神から与えられた恩恵なんですよね。そして、それは神の意志ひとつで壊すこともできる」

「つまり、神の意志ひとつで人間を生かすことも殺すこともできると、彼らは信じているんです。まさに全能の神ですね。そういった神の姿は、聖書やコーランに繰り返し描かれている。砂漠が背景となった一神教の厳格さですね」

「そのような風土と構造、そこに暮らす人々に、僕はどんどん惹かれていったんです。そこからですね、本格的にその奥にあるものを考えて写真を撮り始めたのは」

宗教や神とは、貧困や過酷な自然環境など、生きることに精一杯な人々の中でこそ、大きな心の拠りどころとして成長していくところがあるかもしれない。自分たちの力ではどうにもできない大きな力があるからこそ、神にすがり、救いを求める…。

日本を含めたいわゆる先進国で、信仰心が希薄になってきているのは、物質的な不足感や、争いによって明日死ぬとも限らない不安感がないからかもしれない。

ところで、野町さんが長期間にわたってアフリカで取材を進めていく中で、現地の人とのコミュニケーションについての問題は感じなかったのだろうか?

「かたことでも現地の言葉を覚えていくと、何とかなるものだよ。それに長く滞在していると、周りの人たちと違和感がないくらいに僕も黒く日焼けして、現地の人と見た目にもそう変わらなくなってくるしね(笑)」

「逆に言うとね、言葉が話せるからいいというものでもないんですよ。やっぱり体質的に合うかどうか、または強い目的があるか…そういったことの方がずっと大事なんです。僕は、砂混じりのご飯を食べたりすることも、全然苦にならなかった。やっぱり生活や風土が異なる場所で仕事をしたり、長期滞在する人は、そこでの活動以前に、その場所や人々の生活、文化に抵抗を感じないこと、少なくともそれらを受け入れて馴染んでいけるかどうかということが肝心ですよね」
人間と信仰をテーマに
サハラでの取材を4年も続けて一区切りついたところで、サハラの写真集出版の話が持ち上がった。しかもイタリアの大手出版社からだった。

「日本の出版社に写真集の話を持ち込んでいたときに、ちょうどイタリアの有名な出版社の国際部長が来たんですよ。そこから一緒に共同出版をしようという話になって、1977年に最初の写真集『サハラ』を出版。翌年には、日本、アメリカ、フランス、イギリスでも同時出版されました」

「やはり、このイタリアでの写真集出版は大きかったですね。あれがあったからこそ、次に繋がっていったと思うし、僕にとっても大きな自信になったと思っています」

一般的に、広告の仕事は高収入で、ドキュメンタリー写真だけでは食べていくのが難しいというイメージがあるが、野町さんはどのようにしてスタジオから、完全にフィールドでの活動に切り替えていったのか?

「ん〜、やっぱり少しずつ認められていって、雑誌で取り上げられたり、広告写真に使ってもらったりしたからだと思うよ。なによりも、あの時代は地球の辺境地域の写真は珍しかったし、読者の興味も高かったからね」

サハラでの撮影の後、野町さんのテーマは宗教、つまり人間や信仰といったものに益々シフトしていった。アフリカ、中近東をはじめとしたイスラム世界、国民の8割をヒンドゥ教徒が占めるインド、インド直系の仏教が根付くというチベットなど、様々な国、そこに暮らす人、そして信仰をテーマに取材を続けてきた。

「最初に訪れたサハラで、そこに住む強靭な人々の心にある“イスラム”という信仰、宗教に興味を持った。それらをテーマに撮り続けることによって、国や宗教は違っても、同じようなテーマで仕事の依頼がくるようになっていったんですよね。そして、そういった撮影を繰り返していくことによって、宗教とそれを育んだ風土といった背景にますます興味を持っていったんでしょうね」

「僕が撮っているテーマというのは、すごくインターナショナルなテーマだと思うんです。僕の写真が海外でも高い評価を受けるのは、宗教観、宗教意識の低い日本よりも、海外の方がずっとそういったことへの関心が高く、理解があるからだと思います。だから、撮影するにあたっても、僕は日本の読者だけを想定するということではありません」


次回の配信(3/26配信号)もどうぞお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展】
東京写真学園生徒&OB―永田陽一セレクト展
「Reminiscences」
塩崎亨写真展

■3月20日(火)〜4月1日(日)月休
■11:00〜19:00
GALLERY COSMOS
東京都目黒区下目黒3-1-22谷本ビル3階
■JR山手線・東京メトロ南北線・東急目黒線 目黒駅 東口から大鳥神社方面へ徒歩12分
■問 TEL:03-3495-4218

【写真展】
岡嶋和幸写真展
アイルランド紀行
「リング・オブ・ディングル」

■3月12日(月)〜3月17日(土) 
■10:00〜18:00(最終日は16:00まで)
京セラ コンタックスサロン・東京
 東京都千代田区有楽町2-10-1東京交通会館7F
■問 TEL:03-3282-7571

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編 集 後 記
私たちが生きていく上で、誰でも少なからず“心のよりどころ”となるものを持っているのではないでしょうか。神、両親、先祖や民族としての誇り…その対象が何であろうと、人にはやっぱり“よりどころ”が必要なんだと思います。そしてできればそれは、自分にとって絶対的なものであるほどいい。“神”という存在は、ある意味で他人によって壊されるものではないからこそ、安心して信頼することができるのだと思います。本当は自分自身を信頼して、受け入れることができればそれが一番いいのかもしれませんが…。さて、野町さんのインタビューも次回がラストです。お楽しみに。(Hanaoka Mariko)
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