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STILL LIFE a moment's eternity 『一瞬の永遠』 アートン/8820円
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HASHIGRAPHY Future Deja Vu 『未来の原風景』 アートン/8820円
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『十万分の一秒の永遠』 著=立松和平 写真:HASHI(橋村奉臣) アートン/1260円
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ピタッと決まるところ
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今でも、多くの夢を持った若者が挑む、憧れの地ニューヨーク。ニューヨークという街は、一時の夢を見せてくれる街でもあり、また厳しい現実を突きつけてくる場所でもある。そんなニューヨークで、通常の半分の期間で独立を果たした橋村さんは、すぐに仕事をもらうことができたのだろうか。
「仕事はね、すぐにたくさん来たんですよ。アシスタント時代に僕が撮れると、やっぱり見てくれている人がいたんですよね。独立してすぐの時点で、準備が間に合わなくて、仕事を3つ断ったくらいですよ(笑)」
ファッションからスティルライフへ移行したのは何故だったのか。
「単純に、ファッションの仕事をやってきて、“僕はファッションじゃないな”って思ったんです。そもそも、僕自身があまりファッションに興味が無かったんですよね。ファッションのことなんて全然知らなかった。その時点で、まずファッションフォトグラファーにはなれないですよね」
“ファッション”でなくても、人物を撮影する仕事はたくさんある。にもかかわらず、何故“人”ではなく“モノ(物)”に向かったのだろう。
「ある時からね、人物を撮ることにすごく抵抗があったんです。元々僕は、人を撮ることが好きだったんですよ。でもアメリカでは、肖像権がすごくうるさくなって、自分で撮った作品でも、なかなか発表しにくいという話を聞いたんです。そうしたら、だんだん撮ることそのものが億劫になってきてしまった」
「それにね、やっぱり僕自身が、“モノ”に対してすごく興味があったんですよ。誰かが作ったモノにね。モノといっても、工業製品だけではないんですよ。今回の写真展にもあるけれど、食べ物が腐っていくプロセスにしても、僕はすごく美しいものがあると思う。あんなの気持ち悪いじゃないかって思う人もいるかもしれないけどね。僕はそういう思いでは見ていない」
「モノが腐敗していく。それも、地球上で起こるひとつの現象なんですよ。例えばオレンジだったら、ただオレンジの形そのものを撮ってるわけではなくて、中の組織も含めて、時間とともに変化していくものの、ある一瞬を捉えているんですよ」
橋村さんがモノを撮影するときは、じっとその“モノ”を見つめて、何かを感じるまでシャッターを押さないのか。
「基本的にはそうですね。でも、人物に関しては、割と早く撮りますよ。人の場合は、やっぱり撮っていくうちにのってくるところがあるでしょ。特に撮られ慣れていない人は、じっと見られていたら緊張してしまう。撮っていくうちにリラックスしていくわけで、僕は被写体となる人を快適な状態にしていってあげて、シャッターを押し続けるんですね」
「でも“モノ”はじっと見る。例えば、今目の前にペリエのボトルがあります。僕の場合、まずは“どこから撮ってあげたら一番いいのかな?”って色々と動かしながら見るんです。そうすると、なんとなくピタッと決まるところがあるんですよ」
「もちろん、それが広告の仕事であれば、ライティングの問題や全体のイメージなど、僕一人で決められることではないけれど。でも、クライアントやディレクターが求めるものとはちょっと違った視点で見た時に、もっと面白いものが見えてくることがあるわけ。その時は、心に留めておいて、後から撮影するんです」
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FOUR STONES IV −フォー・ストーンIV (C)HASHI
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モノを通して、人の内面を表現したい
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“モノ”を見つめることで見えてくる形がある。しかし、『一瞬の永遠』のように、グラスが壊れていく瞬間瞬間や、水の動きといった、予測のつかないもの、流動的なものは、撮影の前段階でどのように思い描いているのだろうか。
「それもある程度は予測がつくんですよ。例えば、グラスをこの位置からこの角度で落としたら、どのように砕け散るか。もちろん細かいところは分からないですよ。でも、まっすぐ落とした場合と、角度をつけて落とした場合には、確実に砕け方が違うという予測はつくわけですよね」
橋村さんの捉えた『一瞬の永遠』の中に、四つの石が水に落下して、水中に沈んでいく瞬間を捉えた4枚の組写真『FOUR STONES』や、水の入ったグラスが落下して砕けていく瞬間の4枚組み写真『SHATTER W(ガラスの叫び)』がある。
「あれは連続写真だと思っている人が多いんですが、実は一枚一枚撮っているんですよ。8×10(エイトバイテン)で撮っているから、連続撮影はできないですから。本当に一瞬のタイミングを合わせて、シャッターを押さなければいけないから、スタッフとの息が合わないと撮れないんですよ」
また、赤ワインが入ったグラスと、白ワインが入ったグラスでの乾杯の瞬間を捉えた『KANPAI』については。
「あれはね、一方は純粋な乾杯、もう一方は表面的な乾杯なんだよね。人間ってさ、同じ『かんぱ〜い!』ってしてもね、本当に心が通い合っている乾杯と、そうじゃない乾杯があるんだよ。そういうのを、僕なりにちょっと皮肉って作ったのがこの作品なんです。あれは、実際に“乾杯”しているところを撮っているんですよ」
心が通い合っている方は、ふたつのグラスが重なって、赤と白のワインが楽しく踊るように絡み合っている。しかしもう一方は、お互いの息が合わなかったから、グラスも交わらない、ふたつのワインはグラスを飛び出して高く舞い上がっているものの、緊張の中で向かい合っているような、そんな印象を受ける。
「僕はそういうことを表現したいんですよ。モノを通して、人間の内面を表現したいという思いが、すごく強いんです」
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僕の作品でハッピーになってくれたら…
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広告写真においては、コピーとしての文章が添えられるのが普通だが、それは広告イメージ、クライアントの意向を表したものだ。橋村さんは、写真家の作品としての写真に文章や言葉を添えることについては、どのように考えているのだろうか。
「昔はね、言葉を付けることにものすごく抵抗があったんですけど、今はそんなことないですよ。誰かがキャプションを付けてくれることによって、それが人により伝わるのであれば、構わないと思っています」
「昔は、ビジュアル表現においては、言葉とか文章というのはむしろ邪魔だと思っていたし、ビジュアルだけで相手に伝えていかなければいけないと思っていた。自分の中では、言葉を付け加えないで読み取って欲しいと思っていたんですね」
「特に僕の場合は、若いときに、言葉が通じない海外へ行ってしまったでしょ。ネイティブのように巧みな英語表現ができないわけだから、写真そのもので語るしかなかったんですよね。旅行に行って使うちょっとした英会話と、その土地に腰を下ろして日常や仕事で使う英語とは、やっぱり違うんですよ。まして、僕みたいに何もないところで食べていく、自分を売り込んでいくための英語というのは、友達との会話や、ショッピングに必要な英語とは違う。だからこそ、僕は自分を鍛えていくことの大切さを学ぶことができたんですけどね」
「今回の写真展では、僕のプロフィールは展示ていないんです。プロフィールなんか載せなくたって、僕の作品を見た人が何かを感じてくれれば、それでいいんじゃないかなぁって思ったんです。ある意味では、僕にとっての挑戦でもあるんですけどね」
「中の展示については、写真のセレクトから、展示方法、ライティングまで全部僕が決めたんです。何点か、戸板に写真がはみ出た状態で展示したものがあるんです。それも実は、僕の“型にははまりたくない”という思いを表現しているんですよね。最初はフレームに入れていたんです。もちろん、それはそれで綺麗だったんですけど、でもつまらないなぁって思ってね」
『一瞬の永遠』と『未来の原風景』。一方は十万分の一秒の一瞬を捉え、一方は現在の作品が今から千年後の人々の目にはどのように写るのかを想像して表現している、橋村さんのオリジナル技法『HASHIGRAPHY』。
いずれも、見る人に“時間”というものを意識させるが、一方は、私たちの視覚では捉えることができない、見過ごしてしまうような“一瞬”で、一方は、日々の生活でなかなか意識することもないくらい、長いスパンで見つめた“時間”だ。
「地球全体の歴史から考えれば、我々が生きている時間というのは、ものすごく短いスパンでしょ。“瞬間”というのは、僕たちの人生だと思っているんです。歴史の中では、本当に一瞬の人生なんだけれども、今我々が生きている“今”の何かが残っていってくれたら…そんな思いは、誰にでも少しはあると思うんだよね。そんな思いからできたのが『HASHIGRAPHY』なんです」
「未来に子孫を残していくこと、それは全ての人が最低限でいきることですよね。でも、それを表現として残せる人はごくわずかだと思うんです。自分しか責任をとることができない、でも自分しか作ることの出来ないもの、それが自分の作品なんだよね。それが、百年や二百年先じゃなくて、千年先まで残ったら嬉しいじゃない。そんな思いで作ったのが、今回の作品なんです」
「そして、僕がこの世からいなくなっても、僕の作品を持っている人がハッピーになってくれたら嬉しいなぁって思うんだよね(笑)。本当に、僕の中では、そういう思いが強いんです」
「展覧会ひとつとっても、ただ作品を並べてあるだけのものがあるでしょ。それはそれで一つの主張だから、ダメだとは言わないですよ。今回の僕の写真展では、ライティングにもこだわったんです。だって、写真を展示するのにライティングにこだわらないなんて、考えられないですからね。とにかく、既成の枠にはまらないことですね」
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フランソワ・ラシェズと顧客、ランス (C)HASHI
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自分らしい生き方をする
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最後に、フォトグラファーを目指す人へのメッセージを伺った。
「他の人の作品を見たときに、どんな機材を使って、どんな紙を使っているのか、どんなライティングで撮ったのか…そういう技術的なことばかりに捉われないで欲しいですね。表面的なことばかりを、すぐに知ろうとする人が多いんです。そんなことよりも、自分は何を作りたいのかということを考えることが大切なんですよ。何を撮りたいのか、それをどう作り上げていきたいのか、そしてどのような形で世の中に発信していきたいのか、そのことを自分なりに考えて欲しいと思います」
「僕の場合は、若くして日本を飛び出してしまったけれど、必ずしもそれがいいとは言えないんだよ。だって、みんなそれぞれの人生があるじゃないですか。それぞれの環境、性格、目標…みんな違うんだから。ただ、自分らしい生き方をする、それは大事だし、そういうものが作品にもあらわれてくると思います」
「東京でやってもいいし、ニューヨークでもいい。ただ、僕の経験から言えば、若いうちに海外を見ることは、それはそれでとてもいいことだとは思いますけどね」
橋村さんは、一つひとつの出会いを大切にされる素敵な方でした。 貴重なお話をお伺いし、みなさまにお届けできる 機会をいただき、本当にありがとうございました!! 次回のインタビューは来年です。 どうぞ、お楽しみに!!
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