Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2006.10.02
vol. 91
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
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元気にお過ごしですか? 写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週も、注目の若手写真家・桑嶋維さんのインタビューです。今週のピックアップで桑島さんの写真展&トークショーのご案内がありますので、お見逃しなく!!
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私が写真を撮るワケ
本能で感じるまま表現し続けたい 写真家・桑嶋維インタビュー インタビューvol.4
ある一本のビデオとの衝撃的な出会い。『闘牛』というドキュメンタリー、その中でもかなりのコアな分野のものでした。桑嶋さんは、このようなテーマと向き合い、果たしてどのような方法で発表していったのでしょう。今週は写真集制作について詳しくお話いただきます。
■ Profile ■
桑嶋維(くわしまつなき)
1972年東京都吉原生まれ。ロンドンから帰国後、写真家としてファッション、広告、雑誌などで活躍。また、闘牛、闘犬、闘鶏などを追い続け、2005年に写真集『闘牛島徳之島』(平凡社)、2006年『朱殷』(求龍堂)を刊行。フジテレビHP内、少年タケシにてコラム連載予定。
朱殷
求龍堂/2006年5月
3‚990円

■「『朱殷』刊行記念−格闘動物の世界−」

・日時
2006年9月26日(火)〜10月11日(水)
・場所
青山ブックセンター本店内ウォールギャラリーにて








■桑島維Presents フォトマニア・アカデミー『朱殷』−格闘動物の世界−
・日時
10月14日(土)
14:00〜16:00(予定)
・場所
青山ブックセンター本店内・店内A空間にて

※詳細は今週のピックアップにて






『闘牛島徳之島』
平凡社/2005年5月
3‚990円



闘牛で価値観が崩された
雑誌『DUNE』での写真掲載後、桑嶋さんは、ずっと興味を持っていた“闘牛”写真の掲載の話を持ちかけた。

「僕は、自分が面白いと思うことを伝えたい、というのが一番にあって、それができる環境、媒体や編集者の方などには、機会あるごとに自分の思いを伝えてきたんです。『DUNE』の編集の方にも以前から闘牛の話をしていて、わりとすぐにページを組もうかというお話をいただきました。それで、徳之島へ取材に行くことになったんです」

桑嶋さんが闘牛に興味を持ったのは、イギリス留学中に一時帰国した時だった。妹の知人に徳之島出身の人がいて、その人から闘牛のビデオを見せてもらったのだ。

「本当に衝撃的で、それまでの自分の価値観が覆されました」

「僕の中でいいと思っていた今までの価値観が崩れて、海外ではなくて国内に目が向くようになった。それと同時に、自分自身にも自信がついたんです。というのは、転校が多かった僕は、子供のころから国内のカルチャーショックを体感して、そのギャップを常に楽しんできたでしょ。そういう、僕のバックグラウンドにあるもの、僕が持っているものを表現すればいいんだって。徳之島の闘牛というのも、まさに国内カルチャーショックだったわけです」

「もちろん、海外に行って写真を撮るというのもいいんですよ。でも、僕には、生まれ育った環境、日本国内を転々として感じたこと、僕の生き方そのものを表現できることの方が面白いと思えたんです」

『DUNE』で闘牛の写真を発表すると、それを見た雑誌『STUDIO VOICE』の編集長から面白いとの反応があり、闘犬、闘鶏、錦鯉などの写真と文章で、半年間の連載をすることになった。
写真集への第一関門
桑嶋さんが、衝撃を受け、伝えたい、表現したいと思ったテーマ。それがようやく写真集という形になる。

「僕の中では、やっぱり写真集が、一番のプレゼン力がある媒体だった。今はビデオやDVD、インターネットなどたくさんあるけれど、写真集は何もデバイスがいらないし、その場で、はいと見せることができる。それに、手で触れる、触角に残るものは、視覚よりもより残るのではないかなぁとも思うんです。アナログだけど、ビジュアルの最大限の伝わり方です」

「一番はじめの写真集『闘牛島徳之島』の場合は、とりあえず、闘牛、闘犬をまとめたBOOKを持ってまわりましたね。仕事の営業でもありましたが、こういった面白いものがありますから、やりませんか?という感じでお話していました」

「歴史的に価値があるものだけど、これが面白いと思うのは、僕の主観も入っていますからね。僕の提案というのが、果たして一般的にも必要があるものなのか、ということも含め、いろんな雑誌の編集者に意見をお聞しました。自分の中にもフィードバックすることができるし、営業に持って行くブックにも反映させたりしていましたね」

そして、めでたく一冊目を出版したその一年後、早くも2作目の写真集となる『朱殷』を出版する。

「写真集『朱殷』を出版できることになったのは、知り合いのギャラリーの方が、今回出版していただいた求龍堂の編集者の方をご紹介してくださったのがきっかけでした」

「実は最初の一冊目の写真集『闘牛島徳之島』を作っている段階から今回の企画があったといっても過言ではないんですよ。音楽でいうと、アルバムが『朱殷』ですね。いずれは錦鯉は錦鯉だけ、闘犬は闘犬だけ、一つずつ出していきたいと思っています。闘犬というと、高知でしかやっていないと思われているようですが、実は全国区ですし、世界版だって作れる程なんです」

一般的には闘犬というと、しめ縄をつけた土佐犬というイメージは浮かぶが、闘っているシーンや犬そのもののフォルムというのは、なかなか見る機会がない。しかも、競技とはいえ、闘犬だけに限らず、闘牛も闘鶏も、出版するにはデリケートな被写体ではないだろうか。写真集を出版するためには、どのような経緯があったのだろうか。

「はじめは、ファイルにまとめた大きい写真で、いくつかの種類のBOOKを見ていただきました。今回の闘牛、闘犬、闘鶏、錦鯉など今回の写真集に出てくる被写体はどれも表に出てきているものではなかったので、難しかったかもしれません」

写真集を出版する経緯はさまざまだか、企画がある場合、通常、一人の編集者が企画を持ち込み、会社内で議論、OKが出なければ出版はできない。企画の段階でもふるいにかけられ、出版までは、数々の問題をクリアしていかなければならないのだ。

「まずは一人の編集者に、いいなぁと思ってもらわないといけないんです。そして、会社に企画を出していただくというのは、第一関門というか試験みたいなものです。例え批判的な意見があっても、それぞれのプロの目で見ていただけるので、すごくありがたいこと。僕と編集者がいいと思っても、それが他の人に伝わらないこともありますからね」

桑嶋さん自身も、ビデオを用意したり、それぞれの歴史の資料を用意したり、写真だけではなく、さまざまな資料を提示したという。

「『Number』のアテネオリンピック号ではセンターカラーの8P、『STUDIO VOICE』では半年間の連載、『新潮45』は文章を入れたものとか。今まで雑誌等で掲載したものに関しては、だいたいお見せしましたね。それは、世の中にもニーズがあるということだと思うので、プレゼンの中に入れました」

「闘犬や闘牛は700年くらい昔からあるものですが、世間一般からしたら、新しい価値観みたいなものを提示することになると思うんです。ですから、その新しい価値観を果たして、どれだけの人が受け入れいれてくれるかという問題に関しては、議論するべきだし、逆に、その価値観を伝えるためにどうしたらいいかを検討する時間も大切なプロセスでしたね」
信頼するよき理解者たちとの出会い
「通過させてはいけない、伝えずにはいられない。だから、一度写真集を開いた人には、一生トラウマとして残るくらいのインパクトのあるビジュアル性で行きたいと思っていたんです」

「冒頭にある闘いの写真や、血が飛び散っている写真は、特に雑誌では、スポンサーが下りてしまう場合もあるので出しにくい。クレームがくる場合もあります。でも、闘いでの流血など、エネルギッシュで迫力のあるシーンがなければ、今回の写真集のコンセプトも薄れてしまう。それにモノクロだけになってしまったら、今回のテーマの一つである血の色、それぞれのアイデンティティとして、何もかもが共有できるというコンセプトが、きちっとページの中で生きてこない。この写真集を出す意味もなくなってしまいますからね」

「そういった意味でも、僕の写真を理解し、興味を持ってくださる編集者に出会い、美術書の出版社で出版させていただけて、僕はものすごくラッキーだったと思います。僕というよりは、僕が撮っているもののパワーが伝わったんでしょうね」

「構成に関しては、僕はもともとPV(プロモーション・ビデオ)の監督を目指していたので、ビデオクリップの感覚で編集していったという感じです。例えばビデオだと30分の1フレームで動いていくわけだけど、印刷の場合は、今回の版型だと1折16ページ。16というのをワンフレームにして、積み重ねて行きました。映像の編集のようにですね。そして余白を作らず、立ち落とし(全面写真)にする。なので、必然的にテレビの画面を見るような感覚に近く仕上がったと思います」

写真の構成は、はじめに桑嶋さんが並べたものを編集者に見てもらい、その後はアートディレクターが加わり、作り上げていった。

「今回も前回の写真集同様、アートディレクターには、フィッシュデザインの大橋さんと落合さんというユニットで活躍されている方にお願いしました。僕が最初に仕事をいただいた『DUNE』のアートディレクターだった方で、その時知り合ってから、ずっと公私ともにお付き合いさせていただいている方です。仕事もそうですし、作品の方向性とか、どういう手法で撮るなど、相談し、いろいろ積み重ねてきたある意味チームともいえる方々です」

編集者、そしてアートディレクターなど、信頼できる人たちとの出会い。クリエイティブの世界では、1+1+1=3ではなく、10にも100にもなる程のパワーが産まれるのだ。

「誰かに依頼されて作っている訳ではないし、僕自身がやりたいと思ったことに賛同してくれて、またそれを僕だけの世界だけではなく、世間に出すために、ビジネスにまで考えてくれた編集者と、またよりよく演出してくれたデザイナーのアートディレクションの力はとても大きいですね」

「ドライに言えば出版というのは仕事かもしれないけれど、みなさん仕事の枠を超えて、徹夜をしながらもいろいろ考えてくださったりして…。この出会いは、僕にとって本当に財産ですね」

「ですから、こういうチームというか、一つのものを作り上げるための“熱”というか・・・、この目に見えない “熱”があるからこそ広がっていくんだと思います。また、そうなる自信もありますし、それがあるからこそ、伝わっていくんじゃないかなと思います」

「写真集を出したい方はたくさんいらっしゃると思いますが、実は、この理解力のある編集者と出会うというのが一番時間のかかることかもしれませんね」


次週(10/9配信)もどうぞお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展&トークショー】

「桑島維『朱殷』刊行記念
       −格闘動物の世界−」

■10月11日(水)まで 
■10:00〜22:00(最終日19:00まで)
青山ブックセンター本店内ギャラリー
 渋谷区神宮前 5-53-67コスモス青山ガーデンフロア(B2F)

桑島維Presents フォトマニア・アカデミー
『朱殷』−格闘動物の世界−

■10月14日(土)14:00〜16:00(13:00開場)
■青山ブックセンター本店内・店内A空間にて
■定員60名様 入場料500円(電話予約の上、当日清算)
■ゲスト
 *グラフィックデザイナー
 大橋修、落合慶紀(フィッシュデザイン)
 *アートディレクター 
 田邊慎太郎(ワイデン+ケネディ トウキョウ)
■予約受付 青山ブックセンター本店
 電話03−5485−5511にて予約

 (受付10:00〜22:00)


【写真展】
HASHI(橋村奉臣)展
「一瞬の永遠」&「未来の原風景」

■10月29日(日)まで 月曜休館
 (休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■10:00〜18:00 (木・金曜20:00まで)
 ※入館は閉館30分前まで
東京都写真美術館3階展示室
 東京都目黒区三田一丁目13番3号
 恵比寿ガーデンプレイス内
■一般 800円、学生 600円、中高生 400円


桑島維写真集『朱殷』(求龍堂)


















FOUR STONES IV -フォー・ストーンIV 
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編 集 後 記
写真集制作の現場のお話、ここでは書ききれないくらいインタビュー中も熱くお話してくださった桑島さん。この10月14日のトークショーでも、きっと熱く深く語ってくださるはずです。出版社・編集、グラフィックデザイナー、広告のアートディレクターを交えた写真集制作過程、現場の本音を語るトークショーというのは貴重な機会です。写真家、クリエイターを目指している人、強烈なビジュアルを求めている人はぜひ!!(雷鳥社・イタガキ)
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