Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2006.07.31
vol. 85
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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みなさん、元気にお過ごしですか? 写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週は引き続き小山さんのインタビュー4回目です。いよいよ梅雨明け。この夏も写真をおもいっきり楽しみましょう!!
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私が写真を撮るワケ
伝える手を持つクリエイティブフォトプロデューサー・小山一成 インタビューvol.4
株式会社アマナに入社したが、3年近く、紆余曲折しながらもじっくりアシスタントやスタジオマンとして働き続けた小山さん。無事プロカメラマンとして、仕事をするようになっても、気づいたことがたくさんあったという。壁にぶつかったこともあったようですが、どのように乗り越えられていったのでしょう・・・。
■ Profile ■
小山一成(こやまかずなり)
1959年静岡生まれ。1980年東京工芸大学短期大学部卒業後、株式会社アーバンパブリシティー(現 株式会社アマナ) に入社。1990年にはUrbane U.S.A(N.Y)にて活躍し、帰国後、2000年株式会社アウラ設立と同時に代表取締役に就任。ニューヨークADCインターナショナルアワード、ニューヨークフェスティバル(銅賞)、FCC広告賞(グランプリ)、全国カタログポスター展(日本貿易振興会理事長賞)、朝日広告賞('99準朝日広告賞)など受賞も多数。第一線で活躍するコマーシャルフォトグラファー。
株式会社アウラ
株式会社アマナ





僕の写真、はずれてる?
カメラマンになりたての頃は、通販カタログの撮影がメインとなった。“それが、自分にとっては良かったんですよ”と小山さんは言う。

「通販カタログというのは、小さなアクセサリーから、大きな家具まで、とにかく何でも撮れるんですよ。カタログから広告の仕事になった時には、それらをアレンジして、少し突っ込み具合を深くする…。5年も6年もやっていると、スタジオワークの中では、“初めてやること”というのが無くなってきて、仕事をすることに対しては、怖さを感じなくなりましたね」

「撮影のスピードや、ポイントの捉え方というのは、通販カタログを撮っていた時に身に付いたもので、瞬時に割り切れるようになったんです。だから、広告の仕事が大半になった時も、モノを見て『ライティングどうしよう?』って悩んだことはないですね」

場数を踏み、ライティングに悩むこともなくなり、長い下積みを終えて全てが順調に進んでいたはずだった。しかし、ひとつの事を突き詰めていく過程には必ず、新しい壁やスランプにぶつかっていくものなのかもしれない。

では、仕事をしていく中で、スランプや、苦労したことはなかったのだろうか。

「ある時期から、自分の写真が、何か“はずれている”っていうことに気づいたんです」

「僕の下に後輩が入ってきたんですが、その人は、生まれ育った環境や経験が、僕とは違ってハイレベルだったんですよ。すごく趣味のいい両親に育てられ、子供の頃から身の回りにいろいろなものがあって、いい育ちをしている人だなぁって、僕から見るとね、そう感じたんです。僕なんかは、田舎で育っているから、聞いている音楽、見ている映画や絵だって、量も質も全然違う」

「そして、ある時、その後輩よりも仕事が少なくなってしまった時期があったんです。うちの会社は、誰がどれだけの仕事をしたか、数字でしっかり出てくるから分かるんですよ。僕の写真が、マーケットで要求されているものから外れていたんでしょうね。それが、一番最初のスランプだったかなぁ」

「例えば、空っぽの部屋を与えられて、自分の好きな家具などを使って、自由にインテリアを考えていいといわれたとするでしょ。でも、僕はどうしたらいいか分からないんですよ。生まれ育った環境みたいなものっていうのは、ある意味でどうにもならないものがあると思うんですよね」

「最初は僕なりに努力に努力してみましたよ。何らかの手法を得ることはできるかなと思って、暇があれば、日本橋の三越や高島屋に行って、上の階から下の階まで見ていました。当時はお金持ちが行くデパートで、自分には縁がない場所でしたから、そこに行けば、僕の身の回りにはない “いい”ものを見ることができるんじゃないかなと思っていたんです」

「でもね、ある時から、諦めました(笑)。趣味よくモノを組み合わせる力って、自分の中にはあまりないのかもしれない。まして、それが出来るようになった時に、自分が嬉しいかなって考えたら、別に嬉しくないなってことに気がついたんです」

「僕は、空っぽの部屋の中にひとつだけ見せたいものがあればいいんだ。それを自分の写真にしようって思ったんです」
(C)小山一成
(C)小山一成
ちょっとした“ちから具合”が大事
それまでは、ライティングに自信もあり、自分の感覚を疑うことなく撮影をしていた小山さんだが、自分には無いものを持っている後輩との出会いによって初めて、自分の写真について考えるようになったという。

「写真ってすごく抽象的なものだから、『あそこをこう変えたらいい』といったルールがあるわけではない。経験していくことで、感覚的に分かっていくしかないところがあるんです。それは、ほんのちょっとしたことだったりする。そういう、ちょっとした“ちから具合”を、自分で変えるようにしたんです」

それは、具体的にはどういうことだったのか。

「コンピュータの画像で考えると分かりやすいんだけど、色域というのは0〜256まで階調があるんです。僕の写真というのは、ほとんどが暗い方の60%に偏っていて、80〜100くらいにピークがくるんですよ。それは自分の好みなので、どうにもならないけれど、200〜256あたりの調子というのは一切使っていないんですよね」

「要は、出てくる写真が暗いんです。なおかつ、ベタッと潰れてしまっている面積があって、それを印刷にかける時点で、無理やり明るくしようとする。アートディレクターの方にも指摘されましたよ。『お前の写真は、ポジで見るといいんだけど、印刷できないんだよ。印刷すると汚くなる。どうしてだろう?』ってね」

「画像処理の時の“トーンカーブ”で考えると分かりやすいと思いますが、画像が潰れているところには、何も情報が無いんですよね。情報が無いところからは、階調を引っ張りだすことはできない。そうすると、印刷した時にすごく汚い写真になる、そのことに気がついたんです」

「でも、かといって、本当に明るい方にトーンを持ってきても、自分の感じ方とは合わない。だから、ほんの少しだけ明るい方にシフトして、なおかつ、写真の中に潰れているところがないように。どんなに暗く見えても、そのシャドウの中に必ず階調があるようなライティングに変えていったんです」

「それから先は、本当にいい方向に運が廻ってきました。ここぞという時に、自分のことを使ってくれる方に出会うことができたんですよ。若造だったにもかかわらず、名前の知られた方、力のある方々と仕事をさせていただくチャンスをいただいたんです。それがまた、そんなにセンスを問われる写真ではなかったから良かったんですけどね(笑)。新聞15段、一面の仕事をもらって、僕が撮った写真が大きく新聞に載った時は、すごく嬉しかったですよ」

出会いや、タイミングには運もあるのは確かだが、出会った人に認めてもらう何かがなければ、仕事を依頼されることはないはずだ。小山さんに仕事をお願いしようと思わせた“何か”とは、いったい何だったのだろう。

「それは、その人たちに聞いてみないと分からないなぁ。でも、自分で言えるのは、すごく無神経だったってことかな。今でも変わらないんですけど、仕事の前にドキドキしたり、プレッシャーを感じたりはしないんですよ」

「アイディアに関してもです。浮かんでくるのは、いつも、ふとした瞬間ですね。例えば、朝、家からスタジオに入るまでの、ほんの短い時間だったり、寝る前に歯を磨いている時に思いついたり。何かの瞬間に、アイディアがポンと出てくる。いつでもそんな感じだから、次もそうなるだろうと思っているところがありますよね」

「きっと、誰と組んで、どんな仕事をしようと、プレッシャーに感じないことがよかったんじゃないですかね」


次週(8/7配信)もどうぞお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展】

中村征夫写真展
「海中2万7000時間の旅」

■8月5日(土)〜9月18日(月・祝) 
■東京都写真美術館2階展示室
■一般 800円、学生 700円、中高生600円

イザベル・ユペール展
■8月6日(日)まで
■東京都写真美術館地下1階映像展示室
■一般 800円、学生 700円、中高生600円

東京都写真美術館
■東京都目黒区三田一丁目13番3号
 恵比寿ガーデンプレイス内
■10:00〜18:00(木・金は20:00まで)
 ※入館は閉館の30分前まで
■月休(祝日・振替休日の場合はその翌日)

【写真展】

星野道夫展
「星のような物語」

■8月2日(水)〜8月14日(月)まで
松屋銀座8階大催場
■一般 1‚000円、大高生 700円
 (前売りはぴあにて700円)
■10:00〜20:00(月・火は19:30まで)
 ※最終日17時閉場、入場は閉場の30分前まで


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編 集 後 記
ようやく梅雨明けですね。これまでの経験上、私の運気は春に落ちて、夏にかけて上昇していくようです。だから早く夏よ来い!!さて、小山さんの運気もいい方向に廻ってきました。一生を通して、一年を通して、一日の中でも、運気というか、調子というか、目には見えない波が上がったり下がったりしているわけですね。でも、できるだけその波に振り回されないように、一年一年しっかりとした芯を作っていければな〜と思います。(Mariko Hanaoka)

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