Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2006.05.22
vol. 79
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
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毎日楽しくお過ごしですか? 写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週は澤田知子さん5週目です。みなさんは、想いを形にしていますか? どうぞお楽しみに!!
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私が写真を撮るワケ
セルフポートレートは私にとって一番の表現のかたち 写真家・澤田知子インタビューVOL.5
『ID400』で鮮烈なデビューを飾った澤田さん。内面と外観の関係性をテーマにする写真家といわれることが多いということですが…。今週はそのテーマについて、そして『ID400』に続く作品、『OMIAI♡』『cover』『Costume』など先週に引き続き作品制作についてお届けいたします。

■ Profile ■
澤田知子(さわだともこ)
1977年神戸生まれ。成安造形大学写真クラス研究生卒業。現在は同大学の非常勤講師。在学中に2000年キヤノン「写真新世紀」にて特別賞を受賞。自ら変装して作品を撮るという独自の表現方法で新進気鋭の若手アーティストとして注目され、「ID400」、「OMIAI♡」など精力的に作品を発表する。2003年には木村伊兵衛写真賞を受賞。その活動は日本だけにとどまらず、アメリカ、ベルギー、韓国など数多くの展覧会にも出品、国際的にも活躍し続ける。最新作は『Scool Days』(青幻舎)。
公式HP
NEWS LETTER
『School Days』 
青幻舎 2005年3月発売 
2‚940円


















































『OMIAI♡』
青幻舎  
2‚940円


















































『ID400』 
青幻舎 
2‚940円



“答えがない”という答え
内面と外観の写真をテーマにしたことについて、デビュー当初、「澤田さん自身が昔から抱いていた、自分の容姿に対するコンプレックスが根底にある」といった内容の記事が多く見られた。

「あれはですね〜、ちょっと誇張され過ぎていて…、実は少し違っているんです」

「デビューしていろいろな取材を受け始めた頃、テーマについて“どういう風に言えばうまく伝えられるだろう”って思いながら、ペラペラとしゃべっていたんですけど、どうも納得してもらえなかったんです。ある時、『ちょっとコンプレックスがあって…』という言い方をしたら、『あ〜あ!!そういうことですか』って、インタビュアーさんがすごく納得されて。今考えると『そうか、こう言えばいいのか!』って、思ったのが間違えでしたね(笑)」

「もちろんコンプレックスはありますけど、別に深刻なものでも、触れてほしくないものでもなくて。自分では嫌だと思っているけれど、それを人と比べて卑下する必要もないし、それも含めて自分だと思っていますから。だから、“コンプレックスがあったからこそ澤田知子の作品がある”みたいに書かれてしまうと、ちょっと違うんだよな〜って思っていたんですよね」

「私の作品のテーマとコンプレックスについての話を聞こうと取材に来られる方がいらっしゃるんですが、最近はコンプレックスについては否定しているんです(笑)。もちろん、コンプレックスというのも要因のひとつではありますけど、すべてではないんです」

『ID400』についても、コンプレックスをさらけ出す!というものではなく、あくまでも内面と外見の関係について、“その人はその人であること”を表現したかったのだという。

「変わらないはずの内面。外見が変わることで周りの判断というのも変わってしまうということ。それっていったい何なのかなぁ、という疑問から始まっているんですよね。私の作品というのはいつも疑問形で、答えが無く、特別なメッセージもない。それは今もそうです」

外見と内面の関係性。それは、澤田さんがデビュー以来取り組んでいるテーマだが、今では、外見と内面の関係には答えが出ない、ということも分かっているのだという。

「最初は、この問題に取り組めば答えが分かると思っていたんですが、最近では“答えがない”ということに気づいてしまったんですよね」

「“人間は見た目ではなく、中身が大事なんだ”という内面重視論と、“第一印象など、人が判断する基準として外見は大事なんだ”という外見重視論がある。私はどちらもあると思うんですよね。その中で、私の作品は外見重視になったり内面重視になったりして、全身の変装になったり顔だけだったり、という変化があるだけなんです。」

「私の作品を見てくれた人から、よく『様々な人に変身して撮っていますが、感情移入するんですか?』って聞かれるんですけど、全くそういうことは無いですね。皆さんも、結婚式の日にはそれらしい服を着ますよね。そういう感じで変装をしているだけです。別に、コンプレックスから抜け出すために、理想の自分に近づくために衣装をかえたり、お化粧を変えたりしてるわけではないですから(笑)」

「でも、私の写真を見て『あ〜人間には、いろんな可能性があるんだ〜』って思ってくださる方はいらっしゃいます。それはその人と作品との対話なので、どういう風に受け取ってもらっても、見る人の自由だと思います。私の方から“こういう風に見て欲しい”ということは無いですからね」
外見ってすごいなぁ
2000年、大学在学中に「キャノン写真新世紀」特別賞を受賞。いきなりの受賞だった。写真家として社会に出る前に大きな賞を受賞したことにより、周りからの評価や今後の期待が、次の作品へのプレッシャーになることはなかったのか。

「ん〜、それはないですね。ひとつの作品に対して賞を頂いたわけではく、『ID400』からの一連の作品活動に対しての評価をいただけたということでした。今まで自分が一生懸命やってきたことに対しての受賞だったので、このまま続けていけばいいんやなって思っていました」

「私は、あまりプレッシャーとか感じないタイプなんです(笑)。作品作りというのは、別に誰かに頼まれてやっていることではないし、自分で好きでやっていることが仕事になっているわけですから、プレッシャーを感じる必要がないんでしょうね」

「だから、評価されたいとか、売れたいと思って作ったことがないんです。自分に正直に作品を作って、それが幸運にも評価されている。だから、今まで通り頑張るだけですよね」

基本的に、プレッシャーも緊張も感じることがない性格だという澤田さん。作家としての活動を始めてからこれまで、いわゆる“スランプ”も経験したことがないという。

「証明写真シリーズの次の『OMIAI♡』は、証明写真を400枚で打ち切ろうと思っていたころに思いついたアイディアでした。その頃、年齢的にも、ちょうど私の回りで最初の結婚ラッシュがやってきていて、友達の中にもお見合いをする人が出てきたり…そういう日常が身の回りであったんです」

「また、『ID400』の展覧会をした時に、お客さんの7割が、最初、私が被写体として写っているということには気づかなかったんです。『これは全部私が写っているんですよ』って言うとすごくびっくりされる方が多くて、これは私にとっても驚きでした。私が、様々な人の証明写真を撮っていると思っている人が多かったんですよね。その展覧会までは、6対4くらいで内面重視派だったんですけど、そんなことがあってからは、『ちょっと、外見ってすごいなぁ』って思い始めました」

「身の回りでのお見合い話と、展覧会でのお客さんの反応と、それに対して感じたこと。いろんなことが重なって、『OMIAI♡』が生まれたんです」

「日本では、事前に写真だけを見て結婚を決めていた時代もあったわけですよね。そういう話を聞いていて、『すごいなぁ。じゃあ私が何人もの人になって、何枚もお見合い写真を撮って一人の人に送ったら、どれかは選ばれるかもしれない。でもどれが選ばれても、当日その人の前に現れるのは私一人なんだ』って考えた。このお見合いのシステムというのは、私のテーマにぴったりだと思ったんです」

2001年、成安造形大学写真クラスを卒業し、同年『OMIAI♡』を発表。東京、大阪で個展を開催する。

「東京の展覧会では、あまりダイレクトに感想を聞くことができなかったんですけど、大阪でやったときは、反応がすごいんです(笑)。『この子はきっと料理ができないだろう』とか、『この子は多分家族の仲がいいだろう』、『この子は遊ぶのはいいけど、結婚はむかない』とか。本当にいろんな感想を聞くことができました」

「写真展の会場では人気投票を行ったんです。全部私が写っていると分かっていても、みなさん結構真剣に選んで下さるんですよ。特に男の人(笑)。男性は自分の“フェチ”が見えてしまうので、結構隠しながら書いてくれました(笑)。女性の場合はまた少し違って、年配の方は、『自分の息子にはこういうお嫁さんに来て欲しいわ』とか『自分の娘にはこういう着物を着せた』といった感想がありましたね」

「写っているのは全部私なのに、一枚一枚の写真から、本当にさまざまな情報を読み込んで、想像を膨らませ、真剣に悩んで選んでくれているのを見て、改めて『外見ってすごいな〜!』って思いました」

『OMIAI♡』に対する反応から、ますます“外見”に興味を持っていった澤田さんが次に取り組んだのは、ガングロギャルになりきった作品『cover』だった。

「次はどうしようかなぁって考えていた頃というのが、ちょうど“ガングロ”ブームだったんです」

「私は中学・高校生の頃からファッションにすごく興味があって、ファッション誌をたくさん見ていたんです。雑誌で見ているコギャルって、なんかお人形さんみたいじゃないですか。アニメの世界から出てきたようなところもあって。私はコギャルではなかったけど、厚底ブーツだけは履いていました(笑)。キラキラ光っているものが好きなので、コギャルのお店は今でも行きます(笑)」

「でも、社会で一世風靡した“ガングロ”というのは、私たちが雑誌で見ていたようなコギャルとは違って、あまり印象がよくなかったんですよね。頭が悪そうとか、軽そうというようなイメージをもたれていた。でも、私はそういうことに対して何か違和感があった。一人ひとりの個性というのは全く無視して、“ガングロ”というひとくくりで判断している…」

「ちょうど人の“外見”の方に興味があった時で、そこに“ガングロ”という、最も外見だけで判断される人たちがいたんですよね。若い人たちの流行って日々変わるじゃないですか。だから、『これは、今しか作れない!』って思って、すぐに取り掛かりました。実際に“ガングロ”の彼女たちが見たらどう思うかは分かりませんけど、あくまでも、私が見た“ガングロ”を表現しました」

内面の方が大事なんじゃないかと思いつつ、でも外見ってなんだろう?という漠然とした疑問から始まったのが『ID400』。しかし、世の中は、往々にして外見で判断されるところがある。そして、そのことに対しての疑問や違和感から表現されたのが『OMIAI♡』『cover』。一貫してあるのは、“外見と内面の関係”という大きなテーマで、その中で切り口を変えて様々なシリーズを作っているのだという。

「その切り口が内面重視的な発想だったり、時には外見重視的な発想になったり。どんどん外見に興味が移っていって『cover』までいきついたんです」

「コギャルの作品を最初に美容室で予告編として発表ときに、コギャルになりたい人を募集して、私が変装をさせてあげるというイベントをやったんです。面白いことに、変装する前は、なんとなく大人しそうな人たちだと思っていたんですが、コギャルに変装するとものすごくしゃべるんですよ(笑)。それで、お化粧を落とすと、また元に戻る…」

「私の場合は、色んな格好をしても特に気持ちの変化もなく、何も変わらないんですが、彼女たちを見た時に、よく『変装すると気持ちが変わるんですか?』って聞かれるのは、こういうことなのかなって思いました。私は、元々ファッションに興味があったので、色んな服を着るのがすごく好きなんですよ」

肩書きによって相手が変わる…
「『cover』を発表した時は、一番お金がなかったですね。まだ作家として作品が売れるということもなかったし、かといってアルバイトに毎日行くほどの時間もない。週に2〜3回しか働けないとなると、なかなかアルバイトの面接すら通らないんです。バイトの面接も10数回は落ちましたね(笑)」

「当時は大学でアシスタントをしていたんですが、週1回だけ。実家だったので、食事と寝る場所には困らなかったんですけどね。でも、友達と食事に行くお金もないし、洋服を買うお金もない。そんな状態でした(笑)」

作家活動をしながら、安定した収入を得られる仕事につくことの難しさを痛感した澤田さんは、1日から1週間単位で働くことができる派遣会社に登録をした。そして、この派遣会社で仕事をする中で思いついたのが、次の職業シリーズ『Costume』だった。

「制服に限らず、服装から想像できる職業があります。それとは逆に、旅館の女将さんは着物を着ているなど、仕事にあった服装というのもありますよね。そういうものを使って作品化しました」

「派遣で働いている仲間には、主婦の方もいれば、仕事を辞めて次の仕事までのつなぎで働いている方も、学生もいました。お昼を一緒に食べているときに、お互い『何をやっているの?』っていう話になるんです」

「それが、面白いことに、その『何?』という自分の肩書きによって相手の態度が変わるんですよ」

「私が『フリーター』と答えると『ふーん』っていう感じで終わって、『写真をやっている』というと、『へ〜、何を撮ってるの?風景?人?』と反応がある。そして『自分の写真を撮っている』というと、ちょっと変わってるような目で見られて、さらに変装してるというと、もっと変な人に思われる(笑)。でも、『ニューヨークとか、世界でも展覧会をしている』って言うと、『え〜っ!すごいね!』って一気に反応が変わるんですよ。そしてさらに『大学の非常勤講師の仕事もしている』というと、またまた変わる。そうやって、肩書きによって相手の態度や興味の持ち方が、コロッコロ、コロッコロ変わるんですよ(笑)」

「この“肩書き”というのは、私がテーマとしている外見と内面において、外見の部分にあたるのではないかと思って、そこから『Costume』ができたんです」

5キロ増やして、20キロ減!!
『ID400』から始まって『OMIAI♡』『cover』『Costume』まで、澤田さんの作品には、数え切れないほどの洋服、着物、制服を見ることができる。これだけの服をいったいどこから調達しているのか。特に『Costume』で着用している制服は、本物を真似て作ったような服とは思えない。

「あれは貸衣装なんです。何でも揃っているんですよ。警察官の衣装なども、貸衣装屋さんから本物を借りていて…。ですから、『それで外を歩かないでね』って念を押されました(笑)」

「最初に貸衣装屋さんに行ったときに、自分の作品を見てもらって、こういうシリーズで作りたいという話をしたんです。そしたら、その時に話を聞いてくれた方がすごく興味を持ってくださって、衣装探しにもとても協力してくださいました。それからは、行く前に電話をして、今回はこういう衣装で、こんな感じで考えているんですけど…って伝えると、お店に行く日までにはいくつか用意しておいてくれるんです。それぞれの服の正しい着方までも教えてくださるんですよ。いくつか衣装を借りますが、基本的には1日で撮影しますね」

澤田さんの絵作りの徹底ぶりは、バラエティーに富んだメイクや髪型、衣装だけでない。よく見てみると気づくと思うが、作品作りのために、澤田さんの体そのものも変えているのだ。つまり、体重の増減である。

「『OMIAI♡』の撮影の時には、変装のキャラクター作りのために、最初に体重を5キロ増やして、そこから徐々に20キロ減らしていきました」

「太るのはともかく、痩せる秘訣をよく聞かれるんですが、実はそんなに特別なことをしている意識はないんですよ。雑誌に載っているようなストレッチやウォーキングをやったり、ご飯を和食にして、甘いものを控えたり、そういう感じです。でも、かなり太っている状態から短期間に5キロ増やしたので、最初の10キロくらいはすぐに落ちましたね(笑)。もともと太っていたので、皆さんが想像されている20キロ減よりも楽だったと思います」

「『OMIAI♡』では全身が写るので、やはり20キロくらいの差がないと変わらないかなぁと思いました。特に足はなかなか変わらないですからね。だから、はじめから20キロ以内の増減を目標にしていました。でも、痩せると体が軽くなっていって、いろいろな服が似合うようになってくるし、なんか嬉しいですよね(笑)」


次週(5/29配信)もお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展1】
マイケル・ケンナ
「IN JAPAN」

■6月25日(日)まで
 毎週月曜休館(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
 一般1000円 学生800円  
東京都写真美術館地下1階映像展示室
 東京都目黒区三田一丁目13番3号
 恵比寿ガーデンプレイス内
■10:00〜18:00 (木・金は20:00まで)
 ※入館は閉館の30分前まで
■問い合わせ 03-3280-0099


【写真展2】
I Love Art8
『夢の中からみつけた街』

■6月4日(日)まで  月曜休館
 一般1‚000円 学生800円
ワタリウム美術館
 東京都渋谷区神宮前3-7-6
■11:00〜19:00(毎週水曜日は21:00まで)
■問い合わせ 03-3402-3001

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編 集 後 記
外見と内面についてどちらが大事かという答えは、ないんでしょうね。何にでも言えるように、ものごとは白か黒かを二者択一というわけにはいかないし、そうする必要もないのだという気がします。外見ということでいうと、最近私はゆったりとした服を着たいな〜って思うようになりました。「ゆったりした服を着ると、心もゆったりする」という人もいます。心をゆったりさせたいから、そういう服に目がいくのか。ゆったりとした服を着るから心がゆったりするのか。内面と外見はいつでも、お互いに影響し合っているのでしょうね。(Mariko Hanaoka)

問 い 合 わ せ
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