Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2006.02.06
vol. 70
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
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いる雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。写真家の小林紀晴さんの3週目です。撮ることに行き詰っている方、それを抜けるためには、様々な方法があるようです。今週もお楽しみに!!
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私が写真を撮るワケ
出会いと自分を見つめ、写真表現という旅をする 写真家・小林紀晴インタビューVol.3
憧れの東京生活と写真学生でしたが、一時は、なかなか評価されず、写真の世界から離れようとも思った小林さんでした。が、考えに考えた末、ある一つのテーマに行き着いたようです。3回目の今週は、“テーマを持って写真を撮る”ということについてです。
■ Profile ■
小林紀晴(こばやしきせい)
長野県生まれ。東京工芸大学短期大学部写真科卒業。新聞社のカメラマンを経て、1991年よりフリーに。アジアを中心に活動。旅先で出会った日本人の若者達の姿を独自の視点で捉えた写真と文章でつづられた『ASIAN JAPANESE』でデビュー。多くの若者に共感を与える。代表作には『東京装置』『ASIA ROAD』など。2001年には 『DAYS ASIA』で日本写真協会新人賞受賞。2000年より約1年間、ニューヨークに在住。その後は、日本に戻り、『9月11日からの僕のこと』『SUWA』などの作品を発表し続ける。著書は写真集と小説を合わせ20冊以上に及ぶ。
SUWA
1‚995円/アクセス・パブリッシング/2005年8月




















Tokyo Generation
1‚890円/河出書房新社/1999年




















写真学生
520円/集英社/2004年




















ASIAN JAPANESE2
1‚427円/情報センター出版局/1996年


確かな視線とテーマ
今日でも、写真を撮るという行為以前に、自分のテーマを見つけるということに悩む写真学生たちは、少なくない。その当時の小林さんもいくら追いつめられていたとはいえ、その5枚の組写真を境に、いったい何が変わったのだろうか。今まで見ていたブレボケ写真に、突然ピントが合ったかのように何かがクリアになった。そんな感覚だったのだろうか。

「何かね、カンというか、ツボが分かったんですよ。“あ〜こういう風に撮るのか〜”って」

「写真の構成、ストーリー性です。組写真だったら、3枚なら3枚、5枚なら5枚の中でひとつの世界を表すわけですよね。そこにタイトルを付けて、ストーリーやひとつの流れを持たせる」

「それまでの写真は、バラバラだったんです。気に入った写真をただ並べていただけで、結局何が言いたいのかよく分からなかった。一枚一枚の写真は、きれいだったり、何かを表していても、全体で見た時に何も訴えてこない。意味が分からなかったんです」

「それからは、撮る前からコンセプトを考えるようになりました。僕の場合はタイトルがすごく重要ですね」

「2年生の時でした。ある朝テレビを見ていたら、その日がちょうど天皇誕生日。一般参賀のため、皇居に自由に入ることができると、アナウンサーが言っていたんです。そして、その日の午後にもう一度参賀が行われると聞いて、僕はカメラを持って皇居に向かいました。特にテーマを考えることもなく、とりあえず向かった」

「皇居に着いて、人混みの中でカメラを構えていると、偶然、隣に写真家の荒木経惟さんがいたんですよ。当時は、今みたいな取り上げられ方はしていなかったけれど、荒木さんって目立つじゃないですか。“お〜荒木さんがいるよ〜”って、すっごい感動して、ずっと見ていましたね」

「荒木さんは、6×7のカメラでバシバシ撮っていて、アシスタントの方のフィルムチェンジもすごく速いんですよ。“すごいなぁ”って思ってしばらく見ていると、あることに気がついたんです。それは、荒木さんのカメラは天皇陛下へではなく、おじいさんたちに向けられていることでした」

「どうしてかな…ってちょっと考えたら、“この人たちは戦争を経験している人たちなんだ”っていうことが分かったんです。よく見てみると、そこには片足の無いおじいさんの姿もあって…。それが戦争で失ったものなのかどうか、僕には分かりませんが、彼らが、こうして天皇陛下に会いに来ていることの意味、思いというのは、僕なんかがふらりと来たのとは違うわけですよね。“だから、荒木さんはカメラを向けているのか!”って」

「それまでは、何も考えずに目についたモノを適当に撮っていたんですが、僕も荒木さんの真似っこで、おじいさんたちを撮り出しました(笑)」

「それらの写真につけたタイトルは『穏やかな午後〜戦争で死ねなかった父たちへ〜』。当時、つかこうへいの小説で、『戦争で死ねなかったお父さんのために』という本があったんです。それをちょっと変えただけ。これもパクリですね(笑)」

「でも、その時の荒木さんの確かな視線、はっきりしたテーマを持つということは、その後の僕の写真の撮り方にも影響を与えてくれました」
漠然と撮るのではなくテーマを定めて旅立つ
学生時代は、学校で出された課題を別にすると、月にフィルム1〜2本のペースで撮影をしていたという。

「やはりお金が無かったので、あまりバシバシは撮らなかったです。なんか、もったいなくて…」

学校に通いながら、ビル掃除や、ピアノの発表会の写真撮影のアルバイトをし、学校の課題や、個人的な作品のフィルム代や現像代にあてた。そして旅の資金にも。

「旅は好きでしたね」

「写真学校一年生の夏休みには、友達と二人で東北を旅しました。お金がなかったのでテントを担いで、お米も持って…。さすがに、重すぎて移動が大変過ぎたので、お米は途中で捨てましたけどね(笑)。学生のころは、国内ですけど、色んな所へ行きましたよ」

「僕は、旅に出る前にある程度テーマを定めておいて、それに引っかかってくるものを撮るんです。ただ漠然と撮っていても意味がないので…。やっぱり写真って、その人の世界観を見せることだから。撮り手に世界観や主張、視線みたいなものがないと、見る人に伝わるわけないですよね」

「だから、旅そのものが目的になることは、基本的にはないですね。ふらりと旅に出て、いわゆる旅の写真を撮るということはしない」

テーマを持って旅に出て、写真を撮る。しかし、“伝えたい”という強い思いは無いと、小林さんは言う。
写真を撮って、本や写真集という形で表現することについては?

「撮ったからには、せっかくなので見てもらいたい…っていうくらいですね。多くの人に見てもらって、その反応を知りたいということも、特に意識していない。もちろん、“よかったです”って言われたら嬉しいですけど…でも、そのために撮っているわけじゃないですから」


次週(2/13配信)もお楽しみに!!

写真


今週のPICK UP


【写真展】
渡部さとる写真展
「da・gasita-43年目の米沢」

■2月25日(土)まで 
 日・月曜・祝日 休館 入場無料
ギャラリー冬青 東京都中野区中央5−18−20
■11:00〜19:00(最終日は14:00まで)
■問い合わせ 03-3380-7123

【写真展】
「気配kehai」
■東京綜合写真専門学校 安田ゼミ 
 根本知香・間 歩奈・丸山俊和
■2月20日(月)〜2月25日(土)まで 入場無料
表参道画廊
渋谷区神宮前4−17−3アーク・アトリウムB-02
■12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
■問い合わせ 03-5775-2469 


春に向けて、写真専門学校や写真学科で学ぶみなさんの卒業写真展のラッシュです。このメルマガで写真展を紹介したいという方は、開催1週間前までに是非こちらのメールアドレスまでご連絡を!!


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編 集 後 記
私も旅に出るときにはいつもカメラを持って行きますが、テーマを持って旅写真を撮ったことはなかったなぁ。なるほど…という感じです。そこが、普通の旅写真家と小林さんの写真(本)の違いなんですね。表現したい、伝えたい、見たもの聞いたものを他の人と分かち合いたい…"表現”をしている人というのは、それぞれの思いがあるのでしょう。でも、小林さんは"伝えたい”から発表するのでもなければ、自分の作品に対する他の人の反応も特に意識しないと言っていました。その言葉を、言葉尻だけとらえてそのまま解釈してしまうのは違うような…そんな思いで聞いていました。インタビューをしていながら言うのも何ですが、人の思いや、その人の感覚というのは、どこまで言葉で伝えようとしていいのでしょう。今まさに私が書こうとしていることも、言葉にはできないもので…いや〜人って面白いですね〜。(…という、逃げの言葉でしめてしまう方がいいときもあるのでしょう!)(Mariko Hanaoka)
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