Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2005.08.22
vol. 56
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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みなさん今日も楽しくお過ごしですか? 
写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週のインタビューは写真家・石内都さんが登場です。今回は6回のロングインタビューでお届けしてまいります。みなさん、お楽しみに。
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私が写真を撮るワケ
生きているものを愛しむカタチ、それが写真。写真家・石内都インタビューVol.1
美術の祭典、ヴェネチア・ビエンナーレにおいて、日本代表で個展を開くなど、国内外で活躍する写真家・石内都さんがいよいよ登場です。写真を撮るきかっけとは? 写真で表現し続けているものとは? 全6回のロングインタビューで深く迫っていきます。第1回目の今週は、幼少時代のお話です。
■ Profile ■
石内都(イシウチミヤコ)
1947年群馬県生まれ、横須賀育ち。多摩美術大学の織科中退。1970年代半ばから独学で写真をはじめる。国内外で作品を発表し続け、1979年には『アパートメント』で木村伊兵衛賞を受賞。写真集の刊行はじめ、写真展など精力的に行う日本を代表する写真家である。近年は、自身のライフワークとしても撮り続けている、傷跡の写真、爪、手足などの身体の一部を接写した写真などを作品を発表。本年は、第51回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展で日本代表として個展を開くなど、国内外から高い評価を得ている。
『scars』
人の身体に刻まれた傷をテーマに撮り続けられた写真がまとめられた写真集。2005年/4‚410円/蒼穹社


















『薔薇のパルファム』
薔薇が、もっとも匂いたつのは、いつだろう。薔薇をめぐる世界の物語と香りの最新化学をわかりやすく解説。匂いたつような薔薇の写真とともに薔薇の魅力を堪能できる珠玉の書き下ろしエッセイ。文・蓬田勝之 写真:石内都 2004年/1‚680円/求龍堂




















『マザーズ2000-2005―未来の刻印』
「第51回ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館2005」の公式カタログでもある。出品作の『mother's』シリーズのほか、初期三部作、『絶唱・横須賀ストーリー』、『アパート』、『連夜の街』からも収録されている写真集。2005年/2‚415円/淡交社


















『キズアト』
物語として再生する無数の傷跡。写真家により写し取られた傷跡とは紛れもなく写真そのものである。未発表を含む写真56点を収録した写文集。2005年/2‚520円/日本文教出版


両親が働くのは当たり前のこと
1947年、群馬県桐生市生まれ。6歳までの幼少時代を過ごす。
両親が共働きで、家にはふたつ年下の弟と、乳母が一人。群馬県で過ごした当時の思い出はひとつだけ、という。

「4歳の時に家出をしたんですよ。両親がいない間、私は乳母さんに面倒を見てもらっていたんですが、何でか分らないけど、乳母さんにいじめられてたんです(笑)。それに耐えかねて、歩いて2時間くらいのところにある母の実家まで行こうと思って家を出たの・・」

「祖母の家に行くには、渡良瀬川という大きな川を渡らないといけないんだけど・・。そこにかかる錦桜橋という橋が、ちょうど架け替え工事中で。板敷きが仮設で渡してあって、そこを4歳の私が渡っていたんですって」

「でも、そんな小さな子供が一人で渡っているのを見て、誰かが危ないと思い警察に連れて行ってくれたんだと思います。警察へは・・・確か、いとこが迎えに来てくれました。私もはっきりとは覚えていないんですが、川を渡った記憶はあるんです。とにかく、4歳で家出をして、母の実家に辿り着くとういことが、私の原点になるのかな」

石内さんは、父が24歳の時に生まれた。母は父の7つ年上で、若い父の収入だけでは生活していけないということもあり、当然のように母も働いていた。

「両親が働くのは、私にとって当たり前のことでした」

石内さんの母は、18歳で車の免許をとり、満州へ出稼ぎに行く。満州で結婚をしたのだが、まもなく夫は徴兵されて戦場へ。一人とり残されたため、日本に帰国してトラックの運転手として働いていた。人足2人を乗せて軍事物資を運んでいる時に、近くの飛行場へ赴任していた父と知り合う。

父は学徒動員の青年だった。終戦後、大学に戻った父を援助した母は、彼の卒業を待って、桐生で一緒に住み始める。ところが戦死したはずの夫がもどり、母は慰謝料を払って離婚する。

「父は、夏はキャンディー屋さん、冬は納豆屋さんをやっていたの。本当に数ヶ月の間だったようですけど、キャンディーを売っている写真が残っていました。群馬での思い出は、そのくらいしかないですね」

石内さんが小学校に上がるのを機に、一家は家族みんなで横須賀に移り住むことになる。

「商売に失敗して、それ以前から父だけ横須賀に出稼ぎに来ていたんです。でも、家族バラバラに住んでいても仕方ないので、横須賀、正確には追浜に移ってきました」
ある種の違和感
石内さん一家が移り住んだところは、物置小屋を改装した6畳一間。家族4人で身を寄せ合うように暮らしていたという。

「押入れには襖がないの。裸電球がぽつんとあって、『あ〜これからここで生活していくのか〜』って、呆然としましたね。なにしろ、田舎の広い家から引っ越してきたわけですから。台所だって土間でしたよ。七輪で火をおこしてご飯を炊くんです」

「横須賀とはいえ、群馬県の田舎から出てきた私にとっては、カルチャーショックでしたよ。基地の町というイメージはそのとおりですが・・・なによりも、外から来たものに対する“よそ者”意識が強い町でしたね。彼らにはそういう意識はなかったかもしれないけど、やはり移り住んできた方はそれを敏感に感じますよね」

「でも、その時受けた“差別感”というものがあったから、社会の構造というのが自分なりに理解できたのかなと思います。ちゃんと目を開いて、耳を澄ましていると、いろんなことが見えてくるんですよ。いい子ぶってみんなと仲良くはしていましたけど、私は割りと感受性が鋭かったので、そういった環境にある種の違和感を感じていました。結構傷ついていましたね。私の住んでいた場所は、本当に貧しい人たちが集まっていたところだったんです。ただ、ある種の情熱というか、活気はありましたよ。だから、私が傷ついていようが、そんなことを表に出す必要もなかった。それはそれで結構楽しかったですよ」

「生活レベルは非常に低かったですね。でも父は、いつも『これは仮の住まいなんだよ』って私に言ってくれていました。父は自分が大学出だったということもあって、“このままでは終わらない”みたいなプライドがあったんだと思います。父も母も、6畳一間の生活で、私に苦労をさせたという思いがあったようですが…でも、苦労はお金では買えないんですよね」

差別によって傷ついたこと、様々な境遇を持つ人々との貧しい生活。当時の石内さんを取り巻く環境、横須賀という小さな社会の中で感じた、ある種の違和感。しかし、今となってみれば、その横須賀での日々が、実は今の石内さん自身を支えているのだという。

「写真というのは、ある意味でいつも社会性と関わりがあるんですよね。だから、この幼い頃の経験、傷ついたことも含めて、いろんな人に出会って、社会や人となりについて考えました」

「私は高校を卒業して大学に入ったんですが、その時は逆差別されましたよ。周りには大学までいく人がほとんどいなかったですから…その時は、友達がいなくなってしまいました。でも、そういった社会構造というのは、どこへ行っても同じだから、特別なものではないんですよね」

この、横須賀にいた頃に感じた、“ある種の違和感”のようなものを撮影したのが、後の「絶唱・横須賀ストーリー」となっていく。

次号(8/29配信)もお楽しみに!!

写真


柳谷杞一郎のデジタル写真をめぐる冒険
こんにちは。柳谷杞一郎です。
今回のテーマは「現像とは何か」です。でも、その前に画像記録形式についてお話したいと思います。ここから話し始めないと「現像とは何か」を説明しずらいのです。
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう)
写真の学校/東京写真学園校長。
広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に「写真でわかる<謎への旅>」シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある
現在、デジタルカメラの画像記録形式として一般的に使われているのは、JPEG、TIFF、RAWの3種類だといっていいでしょう。

まずは、JPEG(Joint Photographic Expert Group)。現時点でもっとも普及している画像記録形式です。デジタルカメラだけではなく、世界標準のフォーマットとして、WindowsやMacinntoshなどのパソコン環境、インターネット上でも利用が可能です。1番の特長は互換性の高さですが、2番目の特長は、データ容量を圧倒的に小さくできることにあります。

技術的には5分の1から高度な圧縮技術を使って100分の1程度まで幅広い圧縮率を選択することが可能となります。多くのデジタルカメラで画像サイズと圧縮率を任意に選択できるようになっているようです。

ただし、いくら高度な圧縮技術を使っているとはいってもデータ容量を小さくするために、データ情報を切り捨てないわけにはいきません。見た目には変わらないように見えても、元データの画像と比べれば画質は確実に劣化しています。

TIFFはTag Image File Fomat の略。圧縮による画像劣化がないというのが、一番の特長です。
JPEGで画像を保存すると、保存のたびに圧縮が行われて画像が劣化していってしまうことになります。つまり、フォトショップなどで画像をいじり、JPEGで保存を繰り返すと画質はどんどん悪くなってしまうのです。というわけで、なにかしら手を入れたいと考えている画像はTIFFで保存するのが普通。さまざまな圧縮方式に対応し、劣化が起こらないからです。ただし、その分、それほど小さなデータに圧縮ができないし、やや互換性が悪いということになります。

で、3つ目の保存形式がRAWということになるのですが、RAWについての詳しい話は次回に持ち越します。
デジタル「写真の学校」 ご好評頂いている『「写真の学校」の教科書〜基礎編〜』発刊から1年。待望の第二弾!となるデジタル編がついに完成。発売前より予約注文が殺到!! デジカメの基本的ノウハウを含め、あなたの「本当に撮りたい写真」が見つけられる1冊です。柳谷杞一郎氏も編集に関わっています。
雷鳥社(2005/07)/1‚575円(税込み)

「写真の学校」の教科書 大好況につき、発売5ヶ月で4刷出来!!
はじめて一眼レフを手にする初心者からプロカメラマンを目指す上級者まで、写真が大好きな人が通っている写真の学校がつくった「写真の教科書」。柳谷杞一郎氏が執筆・編集しています
雷鳥社(2004/08)/1‚575円(税込み)

花写真〜上手になるための18のルール〜 写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。柳谷杞一郎氏が執筆・編集に関わっています
雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)


今週のPICK UP

■ Profile ■
鷲尾和彦(わしお・かずひこ)
1967年兵庫県生まれ。主な個展に日本の海岸線をバイクで駆け撮影した「インディアン・サマー」(2001年)日本の西端与那国島〜八重山諸島を船で巡り撮影した「アクロス」など。2002年清里フォトアートミュージアムに作品『インディアン・サマー』が収蔵
オフィシャルサイト

鷲尾和彦 写真展 『極東ホテル passengers in the far east 』
本展は、作者がバックパッカーとして小さなホテルでひと夏を過ごした時の作品展。そのホテルとは、東京都台東区山谷地区にある外国人バックパッカー向けの小さな宿。毎日世界中の様々な旅行者が訪れ、去っていく。出会い、語らい、見つめ合い、抱擁、手を振り合う・・・。『浮世(Floating World)』そのものの世界で、様々な旅行者たちとの対話から生まれたポートレート。カラー約30点が展示される。

■8月30日〜9月4日 会期中無休
Roonee247フォトグラフィー
 新宿区四谷4-11 みすずビル1階
■地下鉄丸の内線「四谷3丁目駅」よりすぐ
■12:00〜19:00(最終日のみ16:00まで) 
■問 03-3341-8118
(c)鷲尾和彦

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編集の学校/文章の学校
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編 集 後 記
まだまだ暑いですが、お盆を過ぎると、夏も少しずつ終わりに近づいて、ふと秋の気配を感じます。さて、今週からは石内都さんのインタビューを6回にわたってお送りします。群馬での日々では家出の記憶しかないという石内さん。考えてみれば、私も生まれた時からの生い立ちを聞かせて欲しいと言われたら、思い出せることってごくわずかだなぁと、今更ながら思いました。(Hanaoka Mariko)
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