Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2005.08.08
vol. 55
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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みなさん今日も楽しくお過ごしですか? 
写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。今週で写真家・稲越功一さんのインタビューは最終回です。写真家を目指す人へのメッセージもありますので、みなさん、お見逃しなく!!
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写真の学校|東京写真学園
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私が写真を撮るワケ
自分の中にある“美”を求めて表現の旅をし続ける写真家・稲越功一さんインタビューVol.4
今週は稲越さんの旅のお話です。インド、奥の細道、シルクロードなど幾度も旅を重ねている稲越さんの旅する理由とは? 故郷の高山を離れてはじめて、自身の美の原点がここにあるんだと気付いたように、旅をすることで見えてきたものとは? 最終回も写真家を目指す人への貴重なメッセージがつまっています!! みなさんはどんな旅をしてますか?
■ Profile ■
稲越功一(いなこしこういち)
写真家。1980年講談社出版文化賞受賞。国内、海外で多くの作品集、展示会を出版、開催する。『男の肖像』『Ailleurs』『三大テノール日本公式写真集』『アジア視線』など作品集多数。2005年、松尾芭蕉生誕360周年記念企画として、『芭蕉の言葉』(佐佐木幸綱共著、淡交社刊)を出版、写真展『芭蕉の風景』(銀座・和光ホールにて)を開催。現在、NHK『新シルクロード』取材に参加中。
写真家・稲越功一と行く
「新シルクロード撮影の旅7日間」

2005年8月30日(火)から7日間
NHKシルクロード写真班としても活躍される稲越さんからの指導を得られる、写真術開眼の旅。通常のツアーと異なり、各地で撮影時間が確保。ANA羽田発ウルムチ直行チャーター便あり。
料金:275‚000円〜
問い合わせ:ANAセールス東京支店 顧客販売部シルクロード係 TEL:03−6735−3933












NHK“課外授業ようこそ先輩”
9月14日(水)
放映予定




















『芭蕉の言葉―〈おくのほそ道〉をたどる』
佐佐木 幸綱‚ 稲越 功一著 
写真を稲越功一氏、文章を歌人・佐佐木幸綱氏。現在を代表する2人による共著。「おくのほそ道」の旅の魅力と芭蕉像を分かりやすい文章と美しい写真で伝えられる一冊。2005年/淡交社 1‚995円




















写真集より
「Maybe‚maybe」
デビュー作。 1971年/求龍堂




















『中村吉右衛門―播磨屋一九九二〜二〇〇四』
歌舞伎役者、二代目中村吉右衛門の写真集。名場面から稽古風景まで、20年にわたり撮り続けてきた稲越氏、渾身の一冊。演目解説や対談も収録されている。2004年5月/6‚090円/求龍堂

神秘の国インドへの旅
独立してまもなく、稲越さんは、約2ヶ月間インドを旅してまわった。

「現代アートなんかをやっている芸術家集団で、10人くらいで行ったんです。インドというのは、あの時代、ジョージ・ハリスンや藤原新也さんなど、一部の人たちが神秘性を求めて行った地だったんです。インドの若者像を見てみたい、社会現象を見てみたいという思いと同時に、僕自身も少なからずインドに神秘性を見出していたのかもしれないですね」

民家の軒先を寝床にし、10日に1回シャワーを浴びる、本当に過酷な貧乏旅行となった。しかし、インドでの日々は、故郷である高山と同じくらい比重があるかもしれないという。

「写真家は僕だけで、あとは造形アーティストだったり、モノ書きだったり。だから、それぞれの視点が違うんですよ。みんな個性的な人たちだったので、旅を通して、彼らの人間性や芸術性を見ることができたのも勉強になりました」

「当時は情報が少ないから、行ってみて初めて気づくことばかり。そこが、あの旅の魅力だったともいえますね。今は情報が先行しているから、シルクロードにしても、テレビや、雑誌の特集を見れば、だいたいのイメージができてしまう。だから、旅に“神秘性”を求めるということが少ないんじゃないかなぁ」

今では、かつて“秘境”といわれた地が、もはや“秘境”ではなくなったと言われている。早足でまわるツアー旅行や、情報過多による膨大な予備知識によって、分かった気になってしまうのだ。しかし、その地に深く根をおろしてみないと分らないこともある。

「その地の気候や匂いといったものに、人間の持っている五感を働かせて集中していかないと、旅の一番の醍醐味が感じられないのではないでしょうか。」

「インドではなによりも、自然を一番共有していた人々や、彼らの宗教性といったものにとても心が惹かれましたね」
妄想を消化して加速度をつける
インド旅行を機に、旅を重ねていき、今でも旅は稲越さんの生活の一部になっているという。

「外に出てみないと、本当の日本の姿が見えてこないところがありますよね。旅をするというのは、ある意味で自分を見つめるということなんです。自分がどこへ向っているのか、ということの確認になる。僕にとって旅をすることは、食事をするのと同じ感覚なんです。どこへ行くから、ということで大義名分を持っていくわけではない。日常生活で行うことの延長ですね」

「そこへ行くまでの妄想、自分の勝手なイメージを膨らますところから旅が始まっているんです。思いが強ければ強いほど、実際に現場へ行ったときにがっかりしたりするんですけど、そういうことも含めて、僕の場合は写真の表現に繋がっていきます」

「やはり、行くまでの時間、空間というのが大事なんです。行ってしまえば、後は消化していくだけ。食べるまでの想いというのが、消化することに加速を付けていく。いかに、思いのたけを高くするか。高めて高めて、実際に行ったときのギャップに直面しても、そこからまた面白い表現が生まれてくるんですよね。最初はもちろん、そんな余裕はなかったですけど、旅を続けていくうちに少しずつ分かってきました」

「松尾芭蕉も、30代の旅と、46歳から始めた奥の細道は違うものだったと思いますよ。芭蕉は51歳で亡くなっているんですけど、奥の細道というのは、最後の修行僧のような感じで、自分の死を見つめる旅だったのではないかと。すべてのものに対して、憐れみと同時に、慈しみの心が、俳句となって表れているのではないかと思うのです。それが僕にとっては写真ということになります」

「歳を重ねるごとに、自分の中でのテーマが変化してきた。それが今は、シルクロードなんです。現在の“東京が日本”とは言えないように、“北京や上海が中国”ということではないんですね。本当の中国は、雲南省のド田舎にあったりもする。そういう中国を捉えていくことで、本当の中国の姿が見えてくるのではないか、と思っているんです。それが、10年近くに及ぶ中国撮影になっています」

3年かけて撮り続けた「奥の細道」、そして現在のテーマ「シルクロード」。

「シルクロードは、大陸的で乾きの地なんですが、奥の細道というのは、もっと湿気がある。また、シルクロードが直線だとしたら、奥の細道は曲線なんですね。相反する2本の道を撮り続けてきたことは、生きるということもふくめて、今までにない大きな体験をしたと思っています」
クリエイターとしての深み
稲越さんは、歌舞伎役者の中村吉右衛門さんに出会ってから、もう30年近く写真を撮り続けている。一人の男を撮り続けることで、その人が変化していく姿を、自分の合せ鏡みたいに見ているのだという。

「世間的にいわれる“華がある方”もいらっしゃるのですが、それとは違う特別な華が中村吉右衛門さんにはあるんです。芸に対して本物を目指そうとする姿…職人気質みたいなものに僕は惹きつけられたんです。僕自身もそんな風に生きたい、という思いの投影があるのかもしれないですね」

「学者や先生、評論家だったらいいんでしょうけど、僕らはクリエイターだから、やはりひとつのことがしっかり表現できて、しかもそれが深くなければいけない。単に『好きである』とか、『何十年やっています』というだけでは、“深み”というのが欠落する。確かに『好きこそものの上手なれ』ではあるんですけど、今の表現というのは奥がないとね。表層的な時代なだけに、奥行きが必要なんだと思います。僕もこの歳になって、そういったことがようやく見えてきたのかもしれません」

「表現というのは、自分の中のハードルというのがあると思うんですね。それは歳とともに変わっていく。自分がどこに進もうとしているのか、それは本人であっても分らない。まして、第三者がその心理まで入ることは不可能だと思うんです。それは夫婦であっても、恋人であってもね。だからこそ、表現というものの魅力があるわけですよね。表現というのは、多様性があり、角度がたくさんあるわけですから、ひとつの角度だけを磨いても豊かにはならない。そういう難しさがあるのではないでしょうか」

「また、それとは別に、時代の流れというものもありますよね。ある表現がジャストタイムで受け入れられる“タイミング”というのもある。遅すぎてもダメ、かといって先を行き過ぎてもダメというね。表現といえども、いつでも社会の状況とかみ合っていかないといけない。そのかみ合いがずれてしまうと、せっかくいいものでも、その時代において“いいもの”として浮上してこないことがあるんです」

「そういう意味では、僕は30歳を過ぎて写真家としてデビューしたことが、逆によかったのかな。もっと早かったら、意外に続かなかったかもしれない(笑)。やはり、ある程度人生が分らないと、物事が見えてこないですから」
継続する勇気を持つこと
最後に、これから写真家を目指す皆さんへのメッセージをいただきました。

「やはり“我慢する”ということが大切ですよ。そして、写真という表現をどういうスタンスで考えているのか。短期決戦なのか、腹をすえているのか。それによって、写真への関わり方も変わってきますからね。ですから、僕自身がそうであったように、いろんな経験を十分に貯えてから写真を目指しても、遅くはないと思います」

「最終的には表現だから、時代に関係なく、人が感動するものというのは普遍です。ただ、どの部分に自分が寄り添っていくのか、どこを目指していくかということにもよります。その寄り添い方によっても、自分の志というものが変わってきますからね」

「そして継続する勇気を持つこと。そのためには何かを我慢しなければいけないこともあります。でも、『いかにも我慢しています!』というのはいけないかな、のほほんとやっているようで、実は…とね(笑)」


稲越さん、貴重なお話ありがとうございます。
次号(8/22配信)は久々に女性写真家が登場いたします。
みなさんどうぞお楽しみに!!

写真


柳谷杞一郎のデジタル写真をめぐる冒険
こんにちは。柳谷杞一郎です。
今回からデジタル写真表現の特徴の9番目の特徴として「現像パラメーターの設定が可能」をとりあげます。なんだか、だんだんとややこしい話になってきました。
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう)
写真の学校/東京写真学園校長。
広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に写真でわかる<謎への旅>シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある
僕自身はもっぱらアナログ人間で、極めてデジタルに弱いのです。正直に告白すると、この原稿も手書きで書いています。毎回毎回担当編集者が、僕のペンで書いた判別不能寸前の字を見事に読みとって、デジタルデータに変換してくれているのです。なんとも申し訳ない話ですが、僕がキーボードをたたいていると一回分を連載を書くのに1〜2時間はかかってしまうでしょう。今、僕が職を失ったとしたら、雇ってくれる会社は1社もないに違いありません。

では、デジタルに極めて弱い僕が、何故デジタルについて書こうと思ったのか?

ひとつには、デジタルに弱い僕が、デジタルについて書いた方が「難しいことを易しく書けるのではないか」と思ったからです。

もうひとつは、デジタルカメラを無視して生きていくと決心するには、少々若過ぎるというのが理由でした。もうすぐ50歳ですけどね。引退するには早すぎます。嫌でもデジタルで仕事をしなくちゃいけません。実際に写真はデジタルカメラで撮り始めていますしね。

ただし、撮っているということと、その中味をよく理解しているということは別のことです。僕は東京写真学園の校長をつとめていますが、デジタルについては講義していません。生徒に申し訳ないですものね。

でもね、自分なりにデジタルについて勉強し、自分なりに考えをまとめてみたいと考えました。

で、この連載を始めたのです。今まで書いてきた話は、フィルムカメラの知識の範囲以内でなんとかなりました。でも、そろそろデジタルに弱い僕が苦しむテーマに取り組まなければならなくなりました。

「パラメーター」なんて言葉、銀塩カメラでは用なしだものね。「現像パラメーター」とは、文字通りフィルムカメラで行う現像処理にあたることなんだろうけれど、なんとなくピンときませんよね。銀塩フィルムを現像液につける方はイメージできても、デジタルの画像データを現像するという方はイメージできません。

まずは、このデジタルカメラにおける「現像」ということから考えてみましょう。というところまでで今週は時間切れ。次回は「現像とは何か」をテーマでお話します。
『デジタル「写真の学校」』 ご好評頂いている『「写真の学校」の教科書〜基礎編〜』発刊から1年。待望の第二弾!となるデジタル編がついに完成。発売前より予約注文が殺到!! デジカメの基本的ノウハウを含め、あなたの「本当に撮りたい写真」が見つけられる1冊です。柳谷杞一郎氏も編集に関わっています。
雷鳥社(2005/07)/1‚575円(税込み)





「写真の学校」の教科書 大好況につき、発売5ヶ月で4刷出来!!
はじめて一眼レフを手にする初心者からプロカメラマンを目指す上級者まで、写真が大好きな人が通っている写真の学校がつくった「写真の教科書」。柳谷杞一郎氏が執筆・編集しています
雷鳥社(2004/08)/1‚575円(税込み)





花写真〜上手になるための18のルール〜 写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。柳谷杞一郎氏が執筆・編集に関わっています
雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)


今週のPICK UP

■ Profile ■
John Sypal(ジョン・サイパル)
1979年アメリカネブラスカ州生まれ。2003年ネブラスカ大学卒業。同年、個展「日本人」開催(ネブラスカ州リンカーン市ロタンダギャラリー)。2004年千葉へ移住。

John Sypal写真展「Nebraska,The Good Life」
その土地を離れることで、改めて自分のいる場所を深く考えることがある。作者も、日本への留学経験を機に、故郷との関わりを深く見つめなおした一人だ。本展は、そんな彼が故郷であるネブラスカ州、サウスダコタ州で撮影された作品が並ぶ。作者のアメリカ中西部に対する見方は、ステレオタイプなアメリカ大衆文化ではなく、その土地で生まれ育った彼独自の視点によるもの。作者自身が写真を通じ、反応、質問、そして記録していく。モノクロ35点。

■8月30日(火)〜9/5(月) 会期中無休
■入場無料
新宿ニコンサロン Juna21
新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階 ニコンプラザ新宿内
■JR、地下鉄丸の内線ほか新宿駅(地下道A17出口)
■10:00〜19:00(最終日は16:00まで)
■問03-3344-0565
(C)John Sypal

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編集の学校/文章の学校
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編 集 後 記
4回にわたる稲越さんのインタビューはいかがでしたか? 細江さんもそうでしたが、稲越さんも“表現”ということにこだわりがある方だなぁ、と思いました。さてさて、次回は久しぶりの女性フォトグラファーです。お楽しみに!(Hanaoka Mariko)

<編集部よりお知らせ>
いつもご愛読ありがとうございます。来週は1週お休みをいただきます。次号は8月22日配信です。今週末からお盆休みの方も多いハズ。みなさん、楽しい時間をお過ごしくださいね。

問 い 合 わ せ
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