Photo 365 MAGAZINE & DIGITAL PHOTO LABOS
2005.02.14
vol. 32
写真を仕事にしたい人、写真家になりたい人はもちろん、
写真に興味のある人なら誰でも楽しめるメールマガジンです。
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みなさん元気にお過ごしですか? 
写真を撮ること、観ることが好きな人に、お届けしている雷鳥社メールマガジン
「Photo365MAGAZINE&DIGITAL PHOTO LABO」エディターのイタガキです。
4週にわたりお届けしている写真家・沢渡朔さんのロングインタビューも今週でいよいよ最終回です。沢渡さんの写真へのこだわり、想い、そして写真を撮る人に向けて・・。最終回も沢渡さんからの貴重なメッセージがたくさん詰まっています。
みなさん、お楽しみに!
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私が写真を撮るワケ
自分の撮りたい写真を追求し続ける。写真家・沢渡朔さんインタビューVol.5
これまで4回にわたり、写真との出会い、写真で表現すること、そして写真へのこだわりについて写真家・沢渡朔さんにうかがってきた「私が写真を撮る理由」も今回で最終回。
最終回では、沢渡さんのテーマ、そしてその写真を撮り続けることの意味、また、カメラマンを目指す人へのメッセージをいただく。
■ Profile ■
沢渡朔(さわたりはじめ)
1940年東京生まれ。高校時代、雑誌『サンケイカメラ』の月例コンテストで1等、2等、佳作を受賞。日本大学芸術学部写真学科卒。「ハロウィーンのシリーズ」にて日本広告写真家協会(APA)奨励賞受賞。日本デザインセンター勤務後、フリーとして『ハイファッション』、『アンアン』等の雑誌において、ファッション・コマーシャルフォトの分野で活躍。日本写真協会年度賞、講談社出版文化賞写真賞など、数々の賞歴を持つ。最近では、井川遙や森下千里など、多くの女性アイドル写真集を手がけ注目を浴びている。著書に、『森の人形館 NADIA』(1973年・毎日新聞社)、『少女アリス』(1973年・河出書房新社)、『小沢征爾』(1975年・集英社)、三國連太郎『Cigar』(1998年・パルコ出版)など。
NADIA 森の人形館
ナディアという一人の女性を追い撮り続けた沢渡氏の代表作ともいえる写真集。モデルと写真家という枠ではくくれない2人の関係性が切ないほど伝わってくる傑作。
1973年/毎日新聞社




















少女アリス
『不思議の国のアリス』をモチーフに、沢渡流の叙情的なメルヘンの世界を表現した名作写真集。少女の中に秘めた女性のエロチシズムの描写も秀逸。写真の間に挿入された詩は瀧口修造と谷川俊太郎が手掛けている。
1973年/河出書房新社



















hysteric Ten 沢渡 朔
タコと女性が官能的に絡み合い、独特の雰囲気が漂うモノクローム写真集。沢渡氏待望の新作。
2004年/ヒステリックグラマー/5‚250円(税込)



いずれ俺たちの時代がくる
当時は、ニコン35ミリ一眼レフカメラのモータードライブが出てきた頃。沢渡さんはその頃既に、35ミリカメラでのポスターの撮影も行っていたという。当時はまだ4×5カメラが主流で、雑誌1ページのファッション写真でさえ35ミリで撮ることはありえなかった時代だ。

「1970年に創刊した雑誌『anan』は、すごく自由だったよ。僕も『anan』でファッションを撮らせてもらっていたけど、35ミリカメラで本当に好きなように撮っていた。ちょうどファッション写真も変わりつつあったんだよね。だからいずれ俺たちの時代がくるなって思っていました」

「雑誌『anan』の創刊から3年くらいは全く新しい感覚だった。あまりにも自由すぎたんじゃないかな。それからファッションもだんだんイメージ写真が出てきて、受け入れられるようになってきたからね。70年代はじめくらいは、僕のカメラマン人生の中でも一番いい時期だったかな」
男性がいて女性がいるっていうこと
1973年、『NADIA』に続く写真集『少女アリス』の発売により、1960年代から撮り続けてきた“女性”と“子供”というテーマが結実することになる。
写真集『少女アリス』より
写真集『少女アリス』より
「『少女アリス』が出てしばらくは、やることがなくなってしまったんだよね。本当はそこからもっと頑張らなければいけないんだけど。迷ってしまったんだね」

二大テーマを撮り終えてそれまで追い求めてきたものが完結したわけだが、その後現在にいたるまで、そしてこれからも「女」を撮り続けていこうと思うのはなぜか。被写体である女性に関わっている中で何か一貫している部分、変わらない部分があるからこそ女性を撮り続けいるのではないだろうか。

「みんなそれぞれ大きなテーマみたいなものがあるんじゃない。それが僕にとっては『女』なんだよね。女性美を求めてということでもない。男性がいて女性がいるっていうことだよね。要するに自分にないものを持っている女性というのが、僕にとって魅力的だっていうことかな。それがなくなってしまったら撮れなくなってしまうから、その辺は難しく考えない方がいいんじゃないかな」

「僕は33歳くらいの時がピークで、その後緩やかに下降線を描いて40代が一番ダメだった。一番迷っていたね。そして50代になって『やっぱり女しかない』って思ったの。10年後は60歳かって考えた時に、自分が写真を撮っていることをイメージできなかったから、できるうちに自分が撮りたいものを撮ろうって思ったわけ。ちょうどそのころからヘアヌードがブームみたいになってきて、それからは迷いなく『女を撮っていこう』って思えた」

「今はアイドルなんかも撮っているけど、みんな15歳から18歳で僕の孫みたいでしょ。あまりにも年齢が離れすぎているから当然恋愛感情なんかないよ。でも女であるという意味では、若い子であろうが熟年の女性であろうが変わらない。やっぱり自分が感じて撮るというのが基本だから、自分の写真を撮らないとね。それが通じなくなったらそれで終わりでしょ」
やっぱり作品を撮り続けるしかない
最後に、カメラマンを目指す若者たちへ向けてメッセージをうかがった。

「確かに、僕たちの頃に比べて今の方が厳しいだろうなとは思うよ。時代のことを考えても、先のことを考えてもね。僕らの時代はこれからどんどん世の中がよくなっていくという時で、もっと希望があったからね。今はまた違うから一概には言えない。でも、最終的にはやっぱり作品を撮り続けるしかないんだろうね。写真が面白くて、写真が好きだっていうことが基本にあってのことだから」

「自分が表現したいという気持ちがあるならば、続けていくことだよ。生きていくための仕事はいくらでもあるわけだから、写真以外の仕事をしながらでも作品を撮り続けること。一番大事なのは、自分の中で『撮りたい』という気持ちがあって、それを作ることだからさ。それは今も昔も変わらないよね。才能がないとか、センスがないとか、そういったことは僕たちがいうことではなくて、自分で気づいていくことだと思うよ」

沢渡さんのインタビューは今週で終了です。
沢渡さん、ありがとうございました。

次号は2/21配信

写真


柳谷杞一郎のデジタル写真をめぐる冒険
こんにちは、柳谷杞一郎です。

前回デジタル写真の第4の特徴として、「フィルムの必要なし。感材費ゼロ」をあげました。

雑誌編集部にとっても、広告制作プロダクションにとっても「感材費ゼロ」は大きな魅力です。必然的に、多くの仕事はフィルム撮影からデジタル撮影に移行しつつあります。
小さな出版社、小さな広告制作会社であればあるほど、この傾向は顕著です。今の世の中、少しずつ経費を切り詰めていかなければ、生き残ってはいけないということでしょう。
■ Profile ■
柳谷杞一郎(やなぎたにきいちろう)
写真の学校/東京写真学園校長。
広告・出版物の制作ディレクターを経て、88年エスクァイア日本版の月刊化に際し、編集者として参加。90年副編集長。91年にカメラマンに転身。“大人の感性”と“少年の温もり”の混在する写真家として注目を集める。写真集に『Rapa Nui』『X』、著書に「写真でわかる<謎への旅>」シリーズの『イースター島』『マチュピチュ』などがある
ここで話は少し横道にそれます。カメラマンの仕事量とギャランティ(報酬)の話です。

昔から、カメラマンの仕事は編集者、ライターと比べて手離れがいいといわれ続けてきました。編集者やライターが、執筆、デザイン入稿、校正・校閲など取材の後も仕事が続いていくのに対して、カメラマンは現像したフィルムを編集部に届けたところで仕事は終わります。で、ギャランティはライターと同じレベルという場合が多く、編集者として仕事をしていた僕は、いつもカメラマンっていいよなぁ、ライターは大変だよなぁと思っていました。
多くの雑誌の仕事のギャランティはページ単価です。カメラマンは、一日に10ページ分の撮影をすることも可能ですが、ライターが一日10ページ分の原稿を書くことは容易ではありません。しかもカメラマンが取材撮影の日だけ拘束されているのに対して、ライターは取材、執筆、原稿内容のチェックなどで、数日間(ヘタをすれば何週間も)を費やすことになります。
これで、ギャラが似たようなものだとしたら、誰だってライターよりカメラマンとしての仕事を選んでしまうはずです(普通の人はそんなもの天秤にかけないかも)。でも、僕は結局編集者・ライターの仕事を捨て、カメラマンになってしまいました。

話を元に戻しましょう。「感材費ゼロ」という理由による、銀塩写真からデジタル写真への移行なのですが、これは間違いなく、カメラマンの仕事を増やすことになりそうです。

まず、今までプロラボに出していた現像の作業を自分でやらなくてはなりません。次は写真のセレクトです。これは前からカメラマンの仕事でした。デジタル撮影した写真をパソコン画面上でセレクトするのは大変なので、インデックスプリント(ベタ焼きのようなもの)をする人が多いと思います(パソコン画面上で比べて21枚目のカットと32枚目のカットと45枚目のカットのどれが一番いいかをチェックするのは結構面倒ですからね)。インデックスプリントでは、細かな違いがチェックできないので、あら選びしたものを何枚かテストプリントしてみます。あるいは画面上で大きくしてみて確認します。ポジフィルムだったら、何枚かの写真を並べてルーペでのぞけばOKだったのに。

この後データをCDに焼き込み、プリント見本をつけて編集部に納品します。ここまででも作業は大幅に増えました。
最近の編集部は、これに加えて、画像編集、レタッチの作業をカメラマンに求めます。
で、この画像編集、レタッチの作業に対してプラスアルファのギャラは支給されません。

『写真の学校/東京写真学園』の卒業生たちも、デジタルに強い人は、こういう仕事をさせられている人が多いようです。たいていの場合、決められたページ単価は画像編集、レタッチが加わっても変わることはありません。

撮影は1日で済んだのに、その後の作業に1週間かかったりするのです。
ギャランティの高い広告写真で仕事をしているカメラマンの人からみれば、「そんなバカな」という話だと思います。

彼らは、現像作業も、インデックスのプリントも、CDへの焼き込みも、すべて別料金で請求できる人たちだからです。画像編集、レタッチは、自分ではやらず、その道のプロに頼みます。その作業に対するギャランティはもちろん別途です。たまに自分で画像編集、レタッチをやる人もいますが、もともと撮影のギャランティが100万円単位ですから、画像編集、レタッチのギャランティもそれに準じて大きくなります。
東京写真学園の講師陣でも、広告の写真の最前線にいる人たちは、撮影以外の作業は当然別に請求すべきだとおっしゃいますが、仕事をスタートさせたばかりの若いカメラマンは、そんなことがいいだせません。いまや画像編集、レタッチは特別技術者による難しい仕事ではなく、個人のパソコンでできるわりと簡単な作業と認識されつつあるからです。

かくしてカメラマンの仕事は、ライター並みに取材撮影後に費やす時間が多くなってきています。これもデジタル写真が生み出した新しい流れなのでしょう。銀塩写真も、デジタル写真も、写真は写真。でもカメラマンの仕事の中身はここで大きく変化しそうです。
「写真の学校」の教科書
大好況につき、発売5ヶ月で4刷出来!!
はじめて一眼レフを手にする初心者からプロカメラマンを目指す上級者まで、写真が大好きな人が通っている写真の学校がつくった「写真の教科書」。柳谷杞一郎氏が執筆・編集しています
雷鳥社(2004/08)/1‚575円(税込み)




















花写真〜上手になるための18のルール〜
写真を上手に撮るために心掛けるべきことは、たった18のルール。まだカメラを持っていない人から中級者まで、読んで楽しい一眼レフカメラ入門の書。柳谷杞一郎氏が執筆・編集に関わっています
雷鳥社(2002/03)/1‚155円(税込み)

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編 集 後 記
男がいて女がいることか〜。私は筋肉ムキムキの男性の体には特に興味がないけど…ん〜アフリカの少数民族(マサイ族など)の女性の体を見たときは、動物的で美しい!!って思いましたね。さて沢渡さんのインタビューも今日で終わりです。次回からは数々のミュージシャンの素顔を撮りつづけるカメラマン。お楽しみに!
(Hanaoka Mariko)
問 い 合 わ せ
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